遠方へのマタ旅と妊婦の学会参加、出張への意識改革へ!危険と隣合わせ

女医ママ
くまさん
女医ママ くまさん

ちまたでマタ旅の自己責任論争が起きています。

そこで内科医としての立場で自分はどうだったのか振り返りました。安定期に1回近隣へ旅行に行ったこと、そして神戸に1人で学会に行ってきたことがあります。マタ旅はダメだけど、学会や出張で他県に行くのはあり?→いや同じでしょうと気づきました。

もっと妊婦や子連れにやさしい世間、学会であってほしいと切実に思います。

今回は「マタ旅」を考えているプレママさんとそのご家族さま、そして「マタ旅」は何が怖いのか知りたい人向けです。

「マタ旅」はいつから言われているのか?

マタニティ中の旅行、略して「マタ旅」がクローズアップされたのは詳細がわかりませんが、2013年発売の「コウノドリ」3巻にも妊婦さんの旅行について、「マタ旅」の話がでてきました。また2015年10月の同漫画のドラマ化でも「マタ旅」が出てきて、その時にも「マタ旅」の論争がありました。

つまり2013年に「マタ旅」の概念があり、それから10年たった現在も「マタ旅」が言葉としても認知されているのです。一説によると旅行会社が火付け役ともいわれています。いまも「マタ旅」お勧めのスポット、旅行について旅行会社や雑誌からもお勧めは流れてきますし、インスタで「マタ旅」の写真もあがってきます。

産婦人科、小児科医に「マタ旅」容認派はいない

実際に診療にあたる産婦人科、小児科の先生を筆頭に、マタ旅をすべきないという声が大半です。それは実際に母子の命に関わる事態が起きることを知っていますし、その母子のために本来はかかりつけでない産婦人科医療のスタッフ、設備が利用されてしまうという意見も多いのです。

その中で、たまひよに2020年に妊娠中の旅行について「【医師監修】マタ旅って本当にダメなの?医師が言う「自己責任」の真意とは」という記事がありました。容認派というわけではないですが頭ごなしに否定はしていないという内容でした。(https://st.benesse.ne.jp/ninshin/content/?id=2082

たまごクラブが産後ママ100人にアンケートを行ったところ、半数以上が妊娠中の旅行=マタ旅を経験していたという結果に!

https://st.benesse.ne.jp/ninshin/content/?id=2082

アンケート調査で2020年という新型コロナ感染拡大の前のことですので、今より旅行に行きやすい状況でしたが半数以上がマタ旅の経験ありでした。自分については後述します。

以下同記事内の竹内正人先生の言葉を一部抜粋して文章を引用します。


マタ旅について、自身も学生時代から世界諸国を放浪し、旅程管理主任者の資格を持つ、東峯婦人クリニックの竹内先生は「妊娠中の旅行はメリットも多く、僕自身は悪いことではないと思っています。ただ以前と比べて妊娠中の旅行のハードルが低くなり、リスクを考えずに気軽に行く妊婦さんが多くなっているのが気がかり」と警鐘をならします。

「例えば、ひどいつわりの妊婦さんが旅行すると、つわりが軽くなって体調が回復することがあるんです。リフレッシュすることで、妊娠生活や出産に前向きになることもあるんですよ」と竹内先生。

その反面、マタ旅当日に体調が悪くても、楽しみにしているパパや家族に言い出せず、体調を悪化させてしまう妊婦さんもいるそう。

「妊婦さんはたとえ健診で問題がなくても、いつ何が起こるかわからないリスクを抱えています。それを理解した上で、旅行中の突然のトラブルに自分たちが対応できるか、きちんと考えて準備することが大切です」。

医師はマタ旅に対して“自己責任”という言葉をよく使います。これは、妊婦さんを突き放しているわけでは決してありません。

旅行中にトラブルがあり、主治医以外の産院を受診する場合、母子健康手帳を確認したり、妊娠経過を聞くなどして情報収集しなければなりません主治医であれば対応できても、場所が違えば処置が遅れることもあります。“自己責任”の真意は『旅先では必ずしも適切な対応が受けられるわけではないよ』という言葉の裏返しなんです。

その面から考えても、海外旅行はあまりおすすめできませんね。言葉の問題はもちろん、旅行先で入院した場合は高額の請求がくることもあります。また、現地で早産をして赤ちゃんがNICU(新生児集中治療室)に入院するようなことがあれば、より高額になってしまいます。それを妊婦さんだけでなく、パパやまわりも理解しもし旅行をするのであれば何かあったらすぐに引き返せるような場所を選ぶのがベターです」。

まず、必ず主治医に相談して許可を取るのが大前提です。それにプラスして①妊娠経過が順調、②妊娠16~31週の間、③移動時間が2~3時間の場所、という条件がそろっていることが理想です。妊娠中期以降に安静を指示された人は、旅行は控えましょう。あちこちに観光に行くのではなく、人ごみを避けて宿泊先でのんびりできるプランがおすすめです。とにかく、トラブルに備えた二重、三重の準備をして、何かあればすぐに引き返す勇気を持ちましょう

https://st.benesse.ne.jp/ninshin/content/?id=2082

頭ごなしにマタ旅を否定していないばかりか、旅行のリスクを丁寧に解説されており、旅行についても前提が主治医の許可となっています。

主治医は「マタ旅」許可は出しません 

リスクを熟知している主治医は「マタ旅」を許可をしないのではないでしょうか?

主治医側としては「マタ旅はリスクがあり許可はできないが、禁止もできない」といった気持ちではないでしょうか? 

下記コウノドリ3巻「海外旅行」より転載させていただきます。

漫画の主治医と同様ですが患者さんには「マタ旅で母子ともに危険になる可能性があるため、どうぞいっていっらしゃいはいえません。体の安全のためにはお勧めはしません。ただ禁止もできないので家族で相談して決めてください。」という表現になるかと思いました。

それは妊娠とは違いますが、透析導入の間近の末期腎不全の患者さんが海外に行くなどと要望したときに、自分が主治医として答えた回答とも重なります。透析が始まる前に故郷へ戻るであったり海外出張であったりと個人の行きたいという理由はそれぞれですが。

ただ患者さん側としては医師から禁止ではないということを、許可したとみなしたり、自分で責任はとるからと安易にマタ旅に行く方もいるでしょう。

家族・同行者からも遠方、無理な「マタ旅」自制をお願いします

「マタ旅」は一人ではなく、夫や家族と一緒に行くことが大半でしょう。

ですので家族である夫(同行者の方)よ!妻とお腹の子どものためにも心を鬼にして、旅行に行かないもしくは近場に行くことにしましょう。一緒になってもしくは率先して海外旅行、離島旅行、遠方への旅行を推し進めないで!

移動時間が2~3時間とこの引用の文章にはなっていますが、もし行くとした場合には実際緊急事態に自分のかかりつけの病院に戻れる範囲の時間を考えるべきと思います。

マタ旅は虐待と同じ 旅行は赤ちゃんが生まれてから、初めての家族旅行

2019年12月の東洋経済ONLINE「妊婦旅行で胎児死亡もあるあまりに悲しい結末 高額な請求も起こるうる「マタ旅」の是非」の記事より抜粋します。マタ旅を考えている方にはぜひこの記事全体を読んでいただきたいです。

妊娠中の旅行は絶対にやめてほしい」ときっぱり言うのは聖路加国際病院・女性総合診療部医長の山中美智子先生だ。

「妊娠16週目以降から安定期という言葉を使われていますが、妊娠に安定期はありません流産の可能性が低くなる時期というだけのことで、22週以降でも1000出産に3人前後は死産になってしまうし、亡くならないまでも、37週目前に生まれてしまう早産は5〜6%で起こります。

子どもが生まれたら、すぐには外出させず、少しずつ外気浴(家の窓を開けるなど外の空気に触れさせること)から始めるのに、お腹の中にいるときは旅行に連れて行く。医師の私から見ると、(生まれてくる赤ちゃんを危険にさらす)マタ旅は虐待だとすら思う」

旅先での妊婦のトラブルで多いのは、出血や流産。同社によると、病院に行った妊婦さんのうち約5割(直近4年程のデータ)が流産もしくは切迫流産だったという。

「飛行機の気圧や環境の変化によるためか、到着直後かその翌日に出血したと連絡してくる人が圧倒的だ。データを見ると残念ながら流産される方が多い」と言うのは、同社海外旅行保険サービスセンター長の武田紀子氏。

日本は世界トップクラスの周産期医療の実績がある。それでも、不用意にお腹の赤ちゃんを危険にさらしていいわけではない

「たった10カ月の間に顕微鏡でやっと見えるくらいの受精卵から3000gまでお腹の中で育つ、その奇跡の過程を守ってほしい」と山中先生。

旅行する人の多くは無事に帰ってきているだろう。それでも、旅行は赤ちゃんが生まれてから、初めての家族旅行まで待つのはどうだろうか。

東洋経済ONLINE https://toyokeizai.net/articles/-/321634?display=b

県立大野病院帝王切開事件

マタ旅とは話が異なりますが産婦人科医減少のきっかけともいえる事件をご存じでしょうか?

2004年12月に福島県立大野病院で帝王切開を受けた女性が亡くなった件で、手術を担当した医師が2006年3月に業務上過失致死、および医師法 21 条違反の罪で起訴され医療界に激震が走りました。女性は癒着胎盤で術前診断が難しく、胎盤剥離を中止して子宮摘出術しなかった過失とされています。(日本産婦人科医科学会「県立大野病院事件に対する考え」より一部引用https://www.jaog.or.jp/sep2012/News/2006/06May17.pdf )

2008年12月に医師に無罪の判決となっていますが、この事件をきっかけに産婦人科医の志望は減り、現在も産婦人科の成り手が少なくお産がいつでもどこでもできるという状況ではなくなってきています。

他にも消化器外科など訴訟のリスクがある、専門医として独り立ちするまでに時間がかかる診療科はこれから専門家を選ぶ若い先生方に敬遠されています。

最近は救急外来での医療トラブルもあり、将来を担う若い先生たちの立場が危うくなっています。→救急外来を振り返って~日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院のSMA症候群の件~内科医として考える 医師は歯科診療ができるのか?医師の応召義務について~市立敦賀病院の歯科に関わる医療事故から~

妊婦さんは無理をしてしまう、ディズニーランド・シーを回避せよ⁽6/6追加)

夢の国といえば千葉県にある東京ディズニーランド・シーですね。大好きで毎年、もしくは数年おきに行っては楽しむ方もいると思います。

妊娠中でもディズニーランド・シーに行こうと考える方は多いと思います。そしてディズニーリゾートでは妊婦さんや体の不自由な方向けのサービスもあります。「合流利用サービス」は妊婦さんなど本人が長時間列に並ぶことが困難な場合、列以外の場所で待機することができるなど配慮されていますし、妊婦さん向けのディズニーの楽しみ方を発信しているSNSも複数あります。

ただ旅行としてでなく都内近郊から来ていたとしても、急にお腹が張る、不正出血があると最寄りの救急病院を受診されると思います。その受け手の病院側である順天堂大学医学部附属浦安病院 産婦人科から2012年にマタ旅に関係した論文が発表されています。自分が大学や教育機関に属していないため論文本文の内容をフルでチェックはできていないですがその論文はこちらです→ 「妊娠中の旅行に関する危険性 ―東京近郊にある巨大テーマパークからの産科緊急受診に関する検討より」日本周産期・新生児医学会雑誌48(3)595-600, 2012

2017年のAERA “マタ旅”は危険?リスク知って赤ちゃん守ろう”(https://dot.asahi.com/articles/-/123501?page=3)に論文執筆者を介して同様の内容が記載されており、抜粋させていただきます。

医学的には『安定期』という言葉はありません。旅行は普段以上に歩いたり、無理なスケジュールで行動したりすることもあり、リスクが低い妊婦でも、突然何が起きるかわかりません」

今野医師は、順天堂大学医学部附属浦安病院に勤務していたとき、旅行中の妊婦における産科救急搬送について論文をまとめた。浦安には年間2500万人程度(当時)が来場する東京ディズニーリゾートがあり、2007年から10年までの4年間に緊急受診した妊婦は129人いた。年間入場者数を考えると、受診数は決して多くはないが、早産になった人は6人、中には妊娠23週で600グラム台の赤ちゃんを産み、翌日亡くなったケースもあった。しかも、10年に同病院を受診した34人のうち、主治医に許可を得て旅行していた妊婦は41%(14人)母子手帳さえ持っていない妊婦もいた。

https://dot.asahi.com/articles/-/123501?page=3

この129名の妊婦さんはディズニーリゾートに行かなければ緊急受診することもなかったはずです。ディズニーランド・シーは夢の国で雰囲気だけでも楽しいですが、お腹が張ってでも楽しもうと無理をしてしまったり、平日も休日も混雑し椅子に座って休憩もしにくい場所もあります。妊婦さんにとってこの地はリラックスどころではない場所ではないでしょうか?

そして主治医が4割で旅行の許可をしていたというのは意外です。2007-2010年の話ですし、この論文発表後はディスニーランド・シーへの旅行を許可しないという医師が増えていると思います。

ディズニーリゾートは子どもが生まれてからもベビーセンターも充実して、楽しみやすいスポットです。ディズニー好きの妊婦さんは妊娠中でなく産後に家族で楽しんでください!

これはディズニーリゾートに限ったことではありません。少し無理をしそうなテーマパーク系は妊婦にとっては危険ともいえ、同じことが言えます。

尚、同記事では沖縄県へのマタ旅の件も触れられています。

沖縄でも、旅行中の妊婦の緊急受診が問題になっている。沖縄県立中部病院(うるま市)には、2004年から14年に沖縄旅行中の妊婦301人が救急で訪れた。切迫流産が135例、切迫早産が65例あり、流産も36例あった。

 出産に至ったのは8例。23週の早産で赤ちゃんが5カ月間、NICUに入院したケースもあった。その母親は、身寄りのない沖縄で生活しながら、病院に通っていたという。

https://dot.asahi.com/articles/-/123501?page=3

沖縄への旅行は沖縄県に居住しているのでなければ飛行機や船を利用します。SNSや旅行会社でお勧めの宿やプランが出てくると思いますが、マタ旅したいのであれば陸路で地元・出産予定病院から近いところにしましょう!

地方の産婦人科医療は?

特に地方では産婦人科医が数名で毎日のように勤務をして地域を支えている病院もあります。

以前初期研修の地域医療で見学させていただいた新潟県の中規模病院では2名の中堅の産婦人科医でお産を担っていました。日中に通常診療も外来もこなし、さらに交互にオンコールを担当されています。お産は待ってはくれないので大変そうでしたが使命感を持っていらっしゃいました。それが15年以上前のことですが、病院HPを見ると現在は3名の全員の年齢が50-60代の産婦人科医が支えている状況です。自分が40代ですが、50-60代で産科オンコールを勤められるとは気力、体力ともに全く思えません。かなり過酷な状況だと思います。

その地域の産婦人科、NICU医療への負担になります

「マタ旅」で都心から離れた地方、離島などに行く。そこで緊急受診の妊婦が来院したらその地域のお産はどうなるのでしょうか?また離島では産婦人科医が不在な地域もありますので、別のところまで海をまたいで搬送してもらうなど大変な事態になりかねません。

医師側としては緊急で来院される場合、対応せざるを得ない上に、それまでの健診データなどもない初診の妊婦がやってくる訳です。

自分が地方で勤務の際、内科当直でレジャーで遊んで腹痛などで受診を救急外来で対応することもありましたが、遊んで救急受診ではないでしょう!というやるせない気持ちがあります。ただえさえ疲弊している産婦人科医が・・・

そして生まれた子供がNICUが必要な場合はその地域の大切なNICUの病床を1つ他所からのお子さんのために使ってしまうのです。元の病院へ搬送が難しい状態でしたら数カ月単位で入院が必要となるかもしれません。その1床はもともとは地域のお子さんのためのものであり、その1床がないために必要な医療が受けれずに他地域に搬送される可能性もあります。安易な「マタ旅」がその地域のお産、お子さんの将来へ影響を及ぼすかもしれないのです。

では自分は?→近隣他県へのマタ旅、神戸への学会

第一子の妊娠中安定期に移動時間1時間以内で温泉旅行に1泊行ってリフレッシュをしました。何かあっても通院先に戻れる範囲で探して電車と車の移動でした。当時は基幹病院に勤務しており仕事に忙殺され気味でしたので、この旅行はよいリフレッシュになりました。

ただその前に安定期ですが神戸で学会があり、その学会の単位の取得のために1人で1泊で神戸へ行きました。新幹線移動はゆったりできると思いグリーン席を確保しました。この時は緊張しながらでしたが体調は問題なく過ごせました。

ただ今になって振り返るとマタ旅は注意をして旅行先、移動時間など考えてにしたのです。しかしこの学会は場所と開催日が決まっているので何かあったら都内へは戻ってこれなかったのでしたが、学会に行くことだけ考えており、万一のことをそこまで想起していなかったという状態でした。神戸で都心のため医療機関は離島とは違いますが、何かあり緊急受診する場合には先方には迷惑になります。

今回、マタ旅論争で自分は違うよね・・と振り返ったところ、マタ旅の危険を知りながらも学会についてはそこまで深刻にとらえていなかったと気づいたのでした。万一何かあっても医学会の会場は医者だらけで主催も〇〇大学医学部ですから対応はできそうですが、やはり先方には迷惑ですね。

同じように会社で勤務をしている中で他県や遠方の出張も行くという妊婦さんもいるのではないか?と思いました。

コロナ禍が医学会にもたらした学会オンライン化

2020年の新型コロナ感染拡大から医療系の学会は軒並み3密回避、行動制限のために、現地開催+オンライン参加、オンデマンド参加という形で学会開催に工夫がなされました。特に緊急事態宣言のときにはそれが顕著でした。医師の立場としても学会会場でクラスター発生という冗談もいえない状況はつくれません。

当時は発表もオンラインで可能となり、ポスター発表はデジタルポスターで発表の形となったりと対策がなされました。

2024年4月の内科学会総会は現地参加+Web参加(LIVE配信・オンデマンド配信)とのハイブリッド開催でした。子育て中の自分にはこのオンデマンド配信は大変ありがたく、現地に当日参加しなくても後日自分の視聴できる時間に好きなプログラムを見ることができるので最高でした。逆に現地で聴講しようとすると人気会場はフロアに入れないほど、立ち見だったりするので、オンデマンドで優雅に画像と音声が見れるのはありがたいのです。

会場に足を運ぶかの選択は自由ですし、会場に足を運ばず学会参加できるのは妊婦、子育て女性や遠方の医師には朗報です。ただ総会以外の少し規模の小さい学会では今年度は現地開催のみが増えてきていますし、発表者は現地のみという縛りが出てきています。

専門医の維持や取得には学会への参加、学会での発表が何回と規定がそれぞれありますので、専門医取得前・維持のために妊娠中でも発表をする女医さんはいますし、現地で直接足を運んで聴講しその場で発表者に質問をしたいという医師もいます。

子連れでの学会参加について気になる方はこちらをご覧ください→久しぶりの学術集会への参加~子連れ学会体験記~

妊婦の出張は?

出張について妊婦さんでも仕事上の関係で自らが行きたいという方もいるでしょう。

妊娠を理由とした安易な業務制限はマタハラともいわれますが、出張場所が遠方であった場合は「マタ旅」と同様のリスクがありますし、妊婦には無理な行程である意味母体に危険な出張内容でしたら自分と子どものために避けるべきです。

何かあったら会社が責任をとれませんから、会社から要請があれば病院から診断書を書いてもらい遠方の出張を避けてもらうようにお願いをしましょう。

妊婦の医師はコロナ病棟、対応から外れる配慮を

そういえば第二子の妊娠中にコロナ感染拡大のため、都からPCRの検査の問診の依頼があったため、検査所に行きフル防護服を着てPCR検査所で検査前の方の問診をしたことがあります。フル防護服とはいえ、コロナ感染の可能性もあり、もし自分ではない医師が妊婦だったら行くのを阻止したと思います。当時はまだ妊娠を周囲に報告していない段階で、感染のリスクは知りながらも感染対策に注意をしつつ、問診業務を行いました。

当時はコロナ病棟には妊婦さんが任務に就かないように配慮はしていましたが、幼児のお子さんのいる親の立場の医師も本当を言うとコロナ病棟に入りたくないと思っていたと思います。その病棟勤務中はホテル住まいで家庭にウィルスを持ち込まないように過ごしている医師もいました。

「マタ旅」も学会も出張も同等のリスクです

「マタ旅」の危険性が言われていますが、妊婦が地元から離れて有事にかかりつけ病院へ戻れないほどの場所への学会参加、出張もリスクは同じだという認識を持ちましょう。

大事なのはリフレッシュや仕事よりも自分と子どもの安全で、他の医療資源に迷惑をかけないということです。

リフレッシュは地元から1~2時間以内でもできる非日常の世界があると思います。

そして遠方への「マタ旅」をされた場合に周囲にアピールする場合にはタバコの箱の注意書きではありませんが、一言現実的な注意書きをつけるべきではと思いますし、他人のためにも素敵で羨まれる写真掲載はしないで身内で見るだけにすべきかと。そのSNSに「いいね!」の肯定も思ってもしない方がいいと思います。ただ個人への批判はしないでください。ちなみに注意をした上での近郊へのマタ旅はありと思っていますので、マタ旅を全否定はしません。

妊婦さんが海外で楽しそうな様子、それだけで自分も行きたいと思ってしまいますものね!必要以上に個人攻撃はいけませんが、妊婦さんとその家族に母子ともに危ないという現実を知ってもらわないと!と思います。

東洋経済の記事にもありましたが、はじめての家族旅行で赤ちゃんと行くのを楽しみにしたいものです。

2 COMMENTS

久しぶりの学術集会への参加~子連れ体験記~ | 女医ママ くまさん

[…] 先日遠方へのマタ旅と妊婦の学会参加、出張への意識改革へ!危険と隣合わせ の後半に「コロナ禍が医学会にもたらした学会オンライン化」で記載していますが、育児中や学術集会、大会の開催地が遠方だった場合にはこのオンライン、オンデマンド配信がありがたいものです。しかしながらコロナの影響が減ってきた現在、学会によってはオンデマンド配信の数が限られ、同じ参加費用を払うのであれば現地参加の方がよいと思わせる内容であったり、規模が小さい学会は現地参加のみになってきています。 […]

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