これまで怪我をして傷を縫ってもらったことはありますか?医師でしたら医療行為として傷を縫ったりします(縫合といいます)。医学生から練習をするのですが、縫合に関係した体験談についてのお話です。
どちらかの経験者より、まだ縫合経験ない方向けの話で、興味あるかたもぜひ!
医学生は傷を糸で縫う練習をします
医学生の頃から糸で仮の皮膚(練習用道具の人工皮膚)を縫ったり、糸結びをしました。外科医が使用する丸針や角針を持針器で持つところから始まり、糸を通して縫います。そして糸結びはほどけないように、かつ素早くできるように、実習で外科を回ると糸結びを所かまわず練習します。外科の医師控室には連なった糸結びの糸をよく見かけました。
現在は医学生は「学生医」として「縫合」手技も許容されていますので、実際に患者様の皮膚の縫合をしているのかもしれません(外科実習の実態など現在知らないため、予想で記載させてもらっています) その場合、患者さんには事前に同意をいただいています
初期研修医からは実際に縫合をします
初期研修医は各科をローテーションしますので、外科もしくは救急外来で縫合を経験します。
実際に私も救急外来で患者さんの傷を縫うことは何度かしました。患者さんには傷のフォローのために、翌日以降に形成外科を受診していただくことを説明していました。
傷を縫う前には局所麻酔をしますので、局所麻酔は痛いですが、傷を縫う時はチクチク感だけと思われます。
医学生の頃から縫合練習を重ねていますので、スムーズに縫合はできます。ただ形成外科の先生はその筋の専門科ですから驚くほど縫合が上手です。
現在は内科医で病棟で主に働いているため、傷を縫うことはありません。ただ、中心静脈という太い静脈にカテーテルを入れる際にカテーテルを皮膚に固定するために3針ほど縫うことがあります。
頭は糸ではなくホッチキスの縫合もあります
地方の病院の救急外来での対応のときに、お酒で酔って転んでで腕を切った方がいたので洗浄後に傷の縫合をしました。その後、今度は頭を怪我した方が来たのでステイプラーという医療用のホッチキスで傷を縫合しました。
初期研修医で脳外科の手術の際に何度もステイプラーの縫合をしていましたのでさっとできました。
ステイプラー縫合はあまり救急外来ですることがなかったのと、1夜で2件の縫合を担当したのははじめてでした。
ステイプラーはホッチキスそのものですので見た目は驚くかもしれませんが、本人は違和感がある程度です。抜くときは専用のものがあるのでさほど痛くはありません。
切ったら傷は縫うのか?→深さによります
日本創傷外科学会から一部引用します。
皮膚の厚みのごく浅い「表皮」だけが切れた場合は、出血があったとしても、通常は、しばらく圧迫していると止まりますし、縫合する必要はありません
皮膚の土台である真皮(しんぴ)成分が露出するくらいの切り傷になると、下の白い真皮がキズからのぞいて、キズもやや開き気味になります。皮膚全層が完全にきれてしまうと皮下脂肪がみえてきますし、キズも大きく開きます。最終的にキズあとがのこりやすいですが、縫合した方がきれいになおる場合が多いので、形成外科を受診しましょう。
https://www.jsswc.or.jp/general/kirikizu.html#:~:text=%E7%9A%AE%E8%86%9A%E3%81%AE%E5%8E%9A%E3%81%BF%E3%81%AE%E3%81%94%E3%81%8F,%E3%81%A6%E3%80%81%E6%8A%97%E7%94%9F%E5%89%A4%E5%85%A5%E3%81%AE
つまり怪我をしたら流水で傷を洗い、しばらく圧迫し、血が止まらない場合には傷の深さが真皮に至っている可能性があるので外来の受診をして縫ってもらう方がいいようです。
血が止まらない(患者として)
話変わって、自分のことです。
症例:30代女性(くまさん本人) 経過:早朝パンを切るために包丁を使用していたところ、左手第四指を切った。出血し流水しティッシュを使用して圧迫するが30分経過しても止血されないため、一般外来の時間を待ち、形成外科を初診した。形成外科医により4針縫合され止血された。2週間後抜糸となった。
早朝で少しぼんやりしていたのか、パンごと自分の指を深く切ってしまいました。思いのほか血が止まらず、ただ重症ではないため救急外来へ駆け込むのもはばかられ、同僚と上司に伝えた上で形成外科を受診しました。局所麻酔をしてもらい縫合してもらいました。とても細い糸で丁寧な縫合で感心しました。その道のプロですからね。
血が止まりにくいお薬やサプリメントを飲んでいたら申告しましょう!
浅い傷でも血をサラサラにするお薬を飲んでいると血が止まりにくいこともあります。受診する場合にどんなお薬を飲んでいるか申告しましょう。
ワーファリン、バイアスピリンは血をサラサラにするお薬として有名ですが、動脈硬化や高脂血症の治療にも使われるイコサペント酸エチル(商品名:エパデール)はサラサラにするお薬という感覚がないかもしれません。またサプリメントでEPAと記載されてませんか?EPAはイコサペント酸エチルのことです。
またバイアスピリンとランソプラゾール(胃薬)の合剤で商品名がタケルダというお薬があります。薬の名前を聞いてもサラサラにする薬が入っているとピンとこないこともあります。
縫合はプロにお任せしましょう!
傷の仕上がりを気にする場合は形成外科の受診がよいと思います。形成外科では丁寧に美しい縫合を受けれます。縫合方法は何種類もあり、形成外科や外科系の先生方はその都度、患者さんに合わせた縫合方法ができるのです。
ただ緊急時は開いてる時間帯で救急外来を受診となりますね。
また病院によっては形成外科ではなく、皮膚科や外科で縫合をする場合もあります。
おそらく外科系以外の科の医師でも縫合が上手な場合もあると思いますが、見た目だけではわかりません。もちろん外科系でなくても通常の縫合は可能ですし、傷はしっかりふさがります。
いずれにせよ、縫合が必要な方が出ないことを願っています。
また自分の子供たちもよく転んでけがをしますが、縫う必要がない程度ですので血がでるときは止まらなかったら行かないと!とドキドキとしています。