愛知医科大学の入試ミスで80名が不合格となって二次試験の受験試験があると通知したというニュースを見ました。
不合格で気持ちを切り替えて次の受験に進んでいるだろうに急に言われても・・・って受験生を舐めているんじゃありませんか?!この大学に入学したい気持ちが失せますよ!
医学部の入試のこと、医学部に入るころの話について、医学部志望の方向けです。
正常解剖と病理解剖について(医学生・研修医時代)~ドクターエッグスを読んで振り返る~ で漫画ドクターエッグスについて触れましたが、朝日新聞のインタビュー記事(筆者の三田紀房先生、作品協力の研修医の話)から引用します
主人公の円千森くんが成績がいいというだけの理由で、高校の先生に医学部受験をすすめられ、医学部に入ったところから物語が始まります
最初から「医者になる」と決めて医学部に入っている学生は、ひと握りだと思います。「医師になりたいかも」という人もせいぜい3、4割で、円くんと同じように「何となく」が4割くらい
https://www.asahi.com/thinkcampus/article-101233/
医者希望の理由がなんとなくがあるのですね。
漫画でも描写がよくされていますが、医学部は6年の生活で低学年は一般教養、途中から医学部教養、病院実習とあり、たいていは部活動も行うので結構ハードです。生半可な気持ちや親に言われてというモチベーションが低い場合は留年したり、中退する可能性、国試浪人もあります。
漫画は現実の話ではないですが、この主人公は実習や人間関係を経て、医師を心から志していく様子が見られます。
医師を目指したのは小学生のころ
自分はどうだったか?
身近な親族が脳梗塞で長い間寝たきりの状態で自宅で介護生活を送っていてリハビリテーションに興味をもったこと、アトピー性皮膚炎のため皮膚科への通院が小学校から続いたことなどから、小学生の頃には医者になりたいと希望を持っていました。だからこれをしたということはありませんが、小学校の頃は定番の保健委員を務めていましたね。
現役時代では医学部受験に間に合わなかった
中学では受験を意識しないで回りの子が行くというので数学、英語、高校からは受験を意識して化学の塾に通っていましたが、当時はセンター試験で社会や国語を含めて網羅して勉強するのは間に合っていませんでした。
1月のセンター試験の結果からも危ういももの、強気の国公立の前期、後期だけの受験をしました。そこであえなく不合格となりました。
浪人して、予備校に通い全教科を受験用に学びました。後々考えても高校時代の自分の勉強法だけでは医学部に現役合格は無理だったと思います。
しかし、現役合格できなかったので鬱々~としました。当時は携帯電話所有はそこまで多くない時代でしたし、パソコンメールで大学に入った友人に連絡をしたりしました。医学部以外は通常浪人する友人もいないので大学生生活を楽しんでいる友人と先が見えない自分を比べると落ち込むしかありません。出歩くのも億劫な日々でした。
浪人時代は思ったより悪くなかった 浪人の響きが悪い
浪人生活って「浪人」の響きがよくない、名前で損をしていますよね。
予備校で同じ目的を持った仲間と会えて、適度な緊張感の中、切磋琢磨した1年でした。高校生活では女子で固まって過ごしていたので、座る周辺にいる男子たちとも話す機会がありました。そして予備校では医学部対策の面接をしてもらったり、励まされました。
ですのでこの浪人時代の1年は自分にとって悪くはなかったのです。新しく受験科目としては世界史と物理を選択したことで物理は得意になれませんでしたがドップラー効果、いまで救急車が過ぎると思い出しますし、そして世界史を学ぶのは楽しかったのです。世界史を学んだおかげで世界遺産にも興味が出て、見に行きたいと思うようになりました。高校では理系と文系に分かれたので歴史を学んだのか?ほとんど記憶がありません。
そして予備校には自習室があり、授業後は自習室に行ったり、他の予備校の授業に行ったりとしていました。
もちろん金銭的な意味での現役合格に勝るものはありませんが、浪人により勉強に余裕ができたことや息抜きも多少できました。
週末には模試も受けました。のちにこういう模試の試験監督のバイトを何度かしましたが、当事者で受けるのと、外野とでは大違いですね。
浪人中に中村哲さんの講演会を聴講
医学部志望の多い校舎のため、医学部向けの講演会も開催されました。
そこでアフガニスタンで人道支援を続けた中村哲さん(NHKアーカイブス 人物: https://www2.nhk.or.jp/archives/articles/?id=D0009250593_00000 )の講演会があり、聴講しました。
現地の医療現場や子どもたちの姿のスライドを映して、厳しい話を穏やかな顔で語っていました。その後も精力的に活動されており、医師として行動も伴うすごい方だと思っていました。2019年に銃撃され亡くなれた時に、あの時、話を聞かせてもらったことに感謝しました。
再受験生とのかかわり
浪人時代にはクラスにいるのは同世代が大半でしたが、社会人を経験した上で医学部受験を目指す再受験組もいました。
落ち着いていてみんなのお姉さん格になっている方、長老のような特殊な雰囲気を持つ方などさまざまです。
再受験組の方には連帯感があるようで、当時は山梨大学(以前は山梨県立医科大学)は浪人生をとってくれやすいなどそんな情報を共有していました。逆に現役生が有利な大学もあると聞きました。
女性と浪人生が入りにくい大学と周囲は知っていた
東京医科大学医学部の不正入試を発端に、女子と多浪生への減点が発覚してから、他大学でも医学部の女性、多浪生差別が判明していきました。
1次試験では2017年は13人、2018年は前局長の息子など6人の、合わせて19人に8点から49点を不正に加算。2次試験ではすべての受験者の小論文に「0.8」の係数を掛けて一律に減点した上で、3浪までの男子には10点から20点を加算する一方、女子と4浪以上の男子には一切、加算せず合格者を抑えていました。結果は、男子の合格者が141人だったのに対し、女子は30人でした。
https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/303228.html
こうした点数の操作は少なくとも平成18年度の入試から悪しき伝統のように行われていたということです。調査委員会は「重大な女性差別的な思考に基づくもので、強く非難されるべきだ」と指摘しました。なぜ、医師になりたいという志を持った受験生を女性というだけで排除していたのか。「女性は結婚や出産で職場を離れることがあり、人手が足りなくなるから」と指摘する関係者もいます。
当時から〇〇大学(複数あり)は出身者が家族にいると受験生は下駄をはく(プラス加点される)から有利とか言われて受験を回避していました。点数だけれでみると男女の差は少ないはずなところ、入学者は圧倒的に男性が多いですからね。どこでも身内びいきというのがありますでしょう。
医学部にはストレートで入る現役生、見た目も言動も若々しいです。浪人生を経て、もしくは再受験を経て入る学生といて、それぞれ違って、また同級生とひっくるめるのはよかったですね。
東京医科大学の医学部不正入試を思わせること、女性医師としての生きづらさを描いた ブラックウェルに憧れて 友人の医師から読むのを勧められた本です。理不尽な想いをする四名の女医と1人の解剖学の教授の人生が交わっていく話で、読みごたえがありました。
医学部受験料は高いが浪人生こそ複数受けないといけない
愛知医科大学の話を冒頭にしましたが、2月は大学受験シーズンでした。
現役時代は無謀な国公立願としたことを反省して、国公立はセンター試験の点数配分から選定、私立受験も併願することにしました。
結果としては国公立の前期試験+私立大学の入試4つを受けました。私立は受験料が高くて4万円ほど1大学あたりかかりました。国公立は地方であると旅費と宿泊費がかかりますからどちらも高いですよね。
地方受験は一人で行きましたが、夜ご飯をホテルで天津丼を注文して食べた思い出があります・・・
当時はある私立大では補欠合格と正規合格では入学金が違うなどありました。補欠の場合は正規合格者が辞退すると繰り上がりの合格になりますが、数百万の強制的な寄付をしないと入れないなどありました。
合格から入学までは約1カ月
試験から合格発表そして入学までは1カ月ないくらいです。地方の場合は住居探しも含めてかなりきついスケジュールですよね。大体大学の寮や一人暮らし用のマンションに入居することが多く、例年のことなので不動産屋さんも慣れています。
ちなみに私は入学時に必要な一覧にノートパソコンがあり、安く他で買うのはダメとされていてかなりな出費があったなとその価格に驚きました。
いわゆるお医者さんだけではない将来の選択肢
医学部卒業後は将来臨床医(いわゆる病院、診療所のお医者さん)以外の道もあります。患者さんと対面しない職場としては、病理学、基礎系の研究をする、法医学もありますし、異色なところでは医療技官(https://www.mhlw.go.jp/kouseiroudoushou/saiyou/ikei/pages/what01.html)として厚生労働省に属することもあります。そう選択が広いのです。ですので生半可な気持ちで実習を乗り越えられないとも思いつつも、乗り越えると、いわゆる医者以外の仕事もありますし可能性は広がっています。アフリカ大陸に渡った知り合いの技官もいます。昔からでいうと森鴎外(イラスト)、「チームバチスタの栄光」海棠尊さん、「となりのナースエイド」知念実希人さんらは医者であり作家でもある方ですね。
医学部を志すのが医者になりたくてはない、という学生さんも真剣に医師を目指して、なっていてほしいなと思います。そして今、目指しているあなたへ。努力は無駄にはなりません。必ず受かるかはわかりません。人生を考えると他のことをやってから医師を目指すのもありでしょうし、そのまま飛び込むこともいいです。ただ親や外の人に言われ目指すのはやめた方がいいです。つらいときに他人のせいにしたくなりますから。
小学受験は親先導の受験、中学受験も親が割と出てくる受験、大学受験は自分の好きなように、行きたいようにやってほしいと思います。お金もかかるので親には相談してね。