大学病院の医者は3足以上のわらじ履いています 大学医師の役職の紹介 そして白い巨塔はあるのか?

以前は大学病院で働ていたので、大学病院の医師がクリニックや市中病院と違うところについてお伝えしようと思います。

大学病院の医師は何が違うか??と疑問を持つ方向けです。

大学の医者は臨床医かつ教育者かつ研究者の3側面があります

通常医者としてイメージするのは外来の主治医や入院の主治医、担当医だと思います。これは市中病院でも同じですよね。

特に大学病院は専門分野に分われていて、特殊な病気をもって、複数の科にまたがって通院される患者さんも多いです。病気や手術●●の権威というような高名な医師もいますね。

臨床の科内ではさらに、医局長や病棟では病棟長や班長などと役割があります。

ちなみに基礎系の先生の場合は外来や入院対応はありません。

大学病院の役職紹介

上から教授、准教授、講師、准講師、助教、後期研修医(3年目以降)、初期研修医(1,2年目)と順々にあり、教授も主任教授、臨床教授、大学院教授、特任教授などと教授の前に何かつくことがあります。ここに大学院生が入ってきます。

特任がつくのは教授、講師とあり、大体期間限定のある領域に特化した部門を専門としており、数年で成果が挙がらないとその特任教員が開いている研究、講座は継続できなくなります。

昔は准教授を助教授といっていたので、現在の助教と混同してしまう方もいると思います。

大学病院の専門外来のまた細分化される専門領域

教授を筆頭に各内科・外科なども部門の外来があります。それぞれ得意分野があるとさらに専門外来を設けたりします。

例えば腎臓部門ですとIgA腎症専門外来、ネフローゼ症候群専門外来、多発性嚢胞腎専門外来などです。消化器内科では肝臓、胆のう、膵臓、上部消化管、下部消化管とわかれていたりします。

多くは病院のホームページでの外来診療部門で紹介されており、初診からその専門外来を受診する場合もあれば、初診担当医から専門外来へ振り分けされることもありますね。

診療科の専門外来を任されるのは助教以上の役職の医師が大半です。助教前の後期研修医の先生が担当することもありますし、初期研修医が初めの問診を担当する病院もあります。

大学病院の入院管理

入院では診療科の入院担当が何チームかある場合には班長、副班長と以下後期研修医、初期研修医で構成される班ごとにチームが分かれて、その班ごとに患者さんを受け持ちます。

患者さんの治療方針は大まかには班長が建てますが、ほぼ毎週、教授を筆頭にしたカンファレンスや教授回診でもその患者さんの治療でよいのか議論がされます。

受け持ち医は教授に入院や経過のプレゼンテーションを行いますので、毎週のカンファレンス前には読み原稿の準備をしたりしますね。班長含めた指導医はプレゼンの指導も行います。

そしてこれにプラスして夜間の当直や休日の当番などが追加されます。教授は当直、休日の当番免除が多いですが准教授、講師でも休日当番を担当する部署もあります。

大学の教育者として 対象は医学部生、大学院生、初期・後期研修医、稀に中高生

大学の特色としては教育機関であることに尽きると思います。

その大学に通学する医学部生や大学院生を筆頭に医師は講義や実習を通して教育者としての面もあります。

さらに学生さんの評価のために定期試験も設けられ、その試験問題作成、回答、試験監督なども医師の役割となります。また医師国家試験などの対策講座を設けたり、補講を行うこともあります。尚、国試系の予備校と提携して対策用のオンライン講座や視聴をするケースもあります。

また現在は中学生や高校生が病院訪問、見学、体験実習をすることもありますね。

学生のテューター、部活の顧問

医学部生のテューターとなって学生さんの質問に答えたり、1学年全体の担当をしたり、准教授以上では学生さんの部活の顧問をすることもあります。

小中高校のように顧問が直接学生さんにその部活を指導するということはめったにありませんが、吹奏楽部でしたら定期演奏会に顧問も演者として参加したり、部活の大会主催では挨拶、学生さんの歓迎・送別会への参加、試合の応援といった参加もあります。

これ、なかなか大変ですよね。試合などの催しは土日祝日ですので、通常業務以外にも定期的な参加が必要になります。歓送迎会は学生さんに合わせて平日夜の18~19時から開催され、仕事帰りに向かわなくてはなりません。

私が医学部時代の部活の顧問の先生は基礎系の教授で穏やかで各会では和やかに談笑をしていました。

医師としての仕事以外に10台後半から20代半ばの年齢が多い若い世代への気遣いというか対応もしないといけないのは・・・楽しんでいただければいいですが、苦痛だったりする先生もいるのではないでしょうか?

大学の研究者として研究と発表

大学では研究者としての側面があります。大学の名を背負って研究、学会発表、論文発表をします。自分が筆頭発表では自分の研究成果をまとめて発表となりますが、初期・後期研修医の先生の発表を手伝ったり、今では医学部生も学内研究発表の場もあるので、自分の科を選択してくれた場合はその発表を導いたりもあります。なかなか素晴らしい発表をする学生さんもいますし、その学生さん自身のやる気ももちろんですが、指導者側の熱意も必要です。

学会は所属する学会で大き目のもの、中程度のもの、こじんまりしたものとあり、所属学会が複数あるとそれだけ参加する必要があります。大抵は学会は土日に開催されます。

例えば腎臓学会はだいたい大きいものが6月、透析学会も6月にあり、中くらいの学会が秋にあり、発表する場合は準備もありますし、開催場所が関東近郊から東北、関西とあり、移動も宿泊込みになったりと中々大変です。

いまは新型コロナ感染拡大の影響でオンライン参加も可能となり、少し楽になりましたが、聴講ではなく発表者は現地での発表のみという場合が多いので出向く必要があります。

研究には臨床データを基にした臨床研究と実験などからの基礎研究とがあります。基礎研究では動物実験でマウスを使用したりとそのお世話が必要だったり、自分が臨床研究しかしなかったので基礎研究についてはそこまで存じてはいません。実験助手さんがいれば動物のお世話を依頼できますが、自分で世話をする場合は休日がそもそもなかったりします。

大学病院のみでは給与が少ないので他の病院でのバイト

これだけの仕事をするのですが、大学病院の給与は総じて市中病院の医師の給与より低いです。

そのため週1回以上、他の病院へバイトに行って稼ぐ必要があります。

転職してみて思ったのは、大学病院の給与+週1回以上のバイト=市中病院の給与<開業医というケースが多いのではと思います。開業医もおそらくピンからキリまであると思いますが。

教授の定年後、誰が次になるか?教授選考がある

大体定年は65歳です。ですので教授が病気などを理由に早期退職しなければ自動的に65歳の年齢の年で定年退職となります。次の教授を選ぶのは、あの白い巨塔で有名な教授選です。各部門の教授が投票するので、後ろ盾がないともともと大学に在籍する准教授が優位なことが多く、外からの公募で来る教授候補は立場が弱かったりします。

大体は研究実績、論文成績、診療実績などを見ての投票です。この投票結果を参考にして理事会で教授が選ばれます。理事会が強い大学であると、教授選の結果では教授が選ばれないこともあります。

国公立では教授会が権限が強い大学もあり、理事会が強いのは私立大学のケースなのかもしれません。

大学の外からの教授が選考された場合

准教授が教授に選ばれた場合は基本的にはその科は大きな変わりはありません。

もし大学外から教授が選ばれた場合は一般的には教授選を争った准教授やその支持者は退職します。支持者が多いほど退職者が増えるため、大学外からの教授はたいていは数人の自分の支持者と一緒に新しく教授に就任して自分の地位を築いていきます。

既存の科の医員と折り合いがつけば大きな変更はありませんが、折り合いがつかないと場合によりほとんどの医員が退職してしまう、というケースもあります。

というのも、教授になるのは白い巨塔張りに教授選考に関わる関係者へのごますり、口利きを頼んだり、腹黒い部分が垣間見えるのです。(全員ではないと思いますが・・・)

ということで、自分が後期研修医でその科へ入局を考えるときは、その科の教授がいつに定年を迎えるかはかなり重要です。定年後にその科のメンバーが一新すると、研究も続けられない、大学にいれないということもあります。ですので向こう8年ほどは教授が定年されないところを選んだ方が安心だと思われます。

この辺りは、通院患者さんもよく感じるのではないでしょうか?教授の定年後に外来を引き継ぐ予定の准教授の先生が教授に選ばれないと数カ月で退職して、外来を引き続く医師がニューフェースだったりと患者さんも翻弄されます。

女医ママ
くまさん
女医ママ くまさん

白い巨塔は唐沢寿明さん主演のドラマをリアルタイムで見ました!

あの曲、あのドラマのイメージが強くて、大学病院で長い廊下を白衣の軍団出歩く教授回診を見かけると、ついつい思い出しました。

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それでも医師が大学病院を選ぶのは?

研究をしたい!いろいろな症例を経験したい!●●先生に師事したい!ということだと思います。

専門医を取得したり、学位を取得したのちに、地元へ戻る、市中病院やクリニックへ転職する、開業するという医師も多いです。大学にいる理由が学生教育をしたい!と強く思って残っている医師は少ないのですが、将来を任せる医師の育成のために尽力は惜しんではいません。

ただ大学病院の医師へ要求されるタスクが必要以上に多く、給与は見合わず、何かアンバランスだと思います。自己犠牲的な部分に頼ってはいないか?と危惧はしています。

女医ママ
くまさん
女医ママ くまさん

大学病院の医師が一般病院、クリニックの医師よりも多忙、かつ役割が多いのに給与が低くて疲弊していると思い、綴りました

ある職場が教授が変わるだけで激変することも多々見てきましたし、大学の運営側の方針に翻弄されることもあります

大学病院の先生、大変だね!と多少思っていただけたでしょうか?!

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