専門以外の方へ:透析患者さんを怖がらないで!対応の心得

震災と透析医療について『震災と透析医療 東日本大震災を振り返って』(2024/1/2公開)にアップしました。透析を受けていただければ、ほぼ通常の生活が送れますので医療者が身構える必要はないはずです。

しかし透析患者さん自身には申し訳ないのですが、自分が初期研修医の頃は救急外来に透析患者さんがいらっしゃると透析の人か・・・と慣れていないので担当するのに緊張したものです。

現在は透析医療とは日々関わるので、透析患者さんが来たら普通の患者さんと同じ対応が自信をもってできます。

今回は透析患者さに慣れていない医師、スタッフ向けの内容です。

透析患者さんの特殊性は

①血液透析か腹膜透析か ②過剰な点滴やカリウムに注意が必要である ③透析をする際のアクセスとして血管のシャントなどがあるので、採血、血圧測定の時に注意が必要 ④緊急入院が必要な場合にその病院に透析のベットが確保できるか、また透析の曜日がいつか? ⑤薬の処方には透析患者さんの投与量で行う の5ポイントを挙げます

特殊性の1つ①血液透析か腹膜透析か?

血液透析の患者さんが大半のため、腹膜透析の患者さんの場合も考え方に大差がないのですが1つだけ。

発熱、腹痛の鑑別に腹膜透析(CAPD)の合併症であるPD関連腹膜炎があります。腹膜透析液の細胞数を調べたり、排液の培養検査を提出するため、基本的には患者さんの通院しているPDの病院へ行って対応をしてもらってくだささい。

血液透析の場合はどこで透析を受けているか(維持透析先)、普段のドライウェイト(理想体重)は何キロか、透析曜日は月水金か、火木土かを確認しておきましょう。(⑤と一部重なりました)

②腎機能廃絶 自尿がほぼゼロ 輸液量とカリウムに注意!

透析をいつからはじめたからでどの程度自分の腎臓が残っているか関係してきます。もし1か月前からの開始でしたらまだまだ腎機能が残存していて自尿もよく出たりしますが、透析歴30年でしたら自尿はなく、腎がんなどの合併症も増えます。

透析に至った原疾患が何かもできれば聞いておきたいことです。原因で多いのは糖尿病ですが、糖尿病で腎機能低下が起きるのは発症から15年近くたってからで、動脈硬化も強く、心臓や脳血管障害のリスクが高い方になります。

とういことで透析患者さんには過剰な輸液をしない!カリウムフリーの点滴を原則使用する!と頭に入れておきます。過剰な輸液をすると自尿がないので心不全となる可能性がありますし、カリウム入りの点滴が入るとこれまた血液中のカリウム濃度が上がってしまうのです。カリウムが上がると死に至る不整脈が出て、心停止する可能性があります。もちろん透析ができればいいのですが、緊急時にすぐに透析ができないこともあれば、透析自体がリスクとなることもあります。

③透析のアクセスはどこから?(大半がシャント)

血液透析だと効き手でない手首の近くでのシャント手術をされることが多いのでシャントの場所の確認と、シャントの音を聴診器で聞いてみましょう。発熱の原因として、シャントや人工血管感染という可能性もありますので、血管の診察も行います。シャントの方で採血、血圧測定は避けましょう。一回行ったらシャントが詰まってしまうことはほぼありませんが、愛護的に気を付けていきたいものです。

腹膜透析でしたら腹部に腹膜透析用カテーテルの出口部があるので、出口部を確認しましょう。そこに発赤や排膿があるとPD関連腹膜炎の可能性が上がります。

④血液透析スケジュールの確認、病院で透析ベットある?

血液透析はその病院で透析のベットの空きの確認が必要です。透析ができない病院もあれば、透析ベットに空きがないと受け入れられない可能性もあります。腹膜透析の場合は対応できる病院がさらに限られるので、通院先での対応がほとんどと思います。

また血液透析は週3回4時間が基本なので、月水金or火木土のどちらかチェックしましょう。入院の場合は維持透析先(透析で通院している病院)へ連絡して、透析情報をいただく必要があります。

⑤そのお薬、透析患者さんに大丈夫?

薬剤は大きく分けて腎排泄と肝排泄があります。腎排泄性の薬はその患者さんの腎機能に合わせて減量が必要です。「透析患者への投薬ガイドブック」がかなり網羅していますので、私も第二版の方になりますが使用しています。

インターネット情報でも「腎障害時の薬剤投与量」を検索するといくつか情報を得られると思います。古いですが腎臓学会から2012年CKDガイドの末尾に薬剤投与量の表が掲載されています。→https://jsn.or.jp/guideline/ckd2012.php

透析患者さんだけでなく、透析直前の末期腎不全の方にも注意を!

以上、透析患者さんについて触れてきましたが、透析がそろそろという末期腎不全の方も同じことがいえます。

見た目だけでは腎機能が悪いのかはわからないので、本人のデータや既往など自分から言えればいいですが認知症や意識障害で言えない場合は採血によって腎機能の情報を得る必要がありますね。

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