自分で救急車を呼んだり、乗車したことはありますか?私は友人の付き添いとして乗車したことと、職業として乗車したこととあります。詳細は→救急車に乗ったことありますか?5回の乗車経験あり!
先日三重県松阪市の取り組みで救急車と選定療養費のことが話題になっていました。今回は選定療養費ってなに?救急搬送の何が大変なのか疑問を思っている方向けです。
以前心肺蘇生法 何歳から学ぶ?子どもから知るべきこと!でも記載したように救急車は現在コールして到着するまでに平均10分を越しています。それは救急車がそれだけ呼ばれているからにほかなりません。
救急車搬送に4万5千円かかる!?
国内では救急車を呼んで病院へ搬送するまで基本無料です。
ただ救急車は1回4万5千円という値段は平成16年の東京専門委員会「機能するバランスシート」内の下記より算出された幾分古いデータからの値です。
平成 14 年度の救急出場回数は 63 万回であるから、1 回当たりの総コストは 4 万 5 千円
https://www.zaimu.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/zaimu/20040727_kinousurubaransusiito-kyuukyuujigyou-honbun
平成14年は2002年ですからいまから22年前のデータです。救急事業コストの集計結果から出動回数で割り算をして45321円から4万5千円という単純計算です。といういことは物価高騰を考えいると今はもっとコストがかかり5万円を超えている可能性もあります。
出動回数が増えれば増える分だけ、救急事業コスト費用は上がり、税金から使用されるのです。
令和5年度の救急車搬送は増加、高齢者が62.1%を占める
では実際の救急搬送の件数についてみていきましょう。総務省より「令和5年度の救急・救助の現状」報道資料(https://www.soumu.go.jp/main_content/000924645.pdf)より抜粋します。
救急自動車による救急出動件数は 722 万 9,572 件(対前年比 103 万 5,991 件増、16.7%増)、搬送人員は 621 万 7,283 人(対前年比 72 万 5,539 人増、13.2%増)で救急出動件数、搬送人員ともに対前年比で増加した。
現場到着所要時間は全国平均で約 10.3 分(前年約 9.4 分)、病院収容所要時間は全国平均約 47.2 分(前年約 42.8 分)となった。令和4年中の救急自動車による搬送人員の内訳を年齢区分別にみると、「高齢者」が 386 万 3,153人(対前年比 46 万 3,351 人増、13.6%増)、「成人」が 186 万 2,388 人(対前年比 15 万 4,606 人増、9.1%増)、「乳幼児」が 27 万 4,140 人(対前年比6万 3,178 人増、29.9%増)などとなっている。
令和4年中の救急自動車による搬送人員の内訳を傷病程度別にみると、「軽症(外来診療)」が 294
万 106 人(対前年比 47 万 9,646 人増、19.5%増)、「中等症(入院診療)」が 270 万 2,797 人(対前年
比 22 万 1,265 人増、8.9%増)、「重症(長期入院)」が 48 万 951 人(対前年比1万 4,511 人増、3.1%
増)などとなっている。図2,図10を転載し下記へ
https://www.soumu.go.jp/main_content/000924645.pdf
上図より令和2年、3年と出動数、搬送人員が減少しましたが、令和4年はいずれも最高に増加しています。令和2-3年の減少については、新型コロナウイルスの感染拡大のため、外出自粛しており、急病や交通事故が減ったのが要因とされています。
この図10からも軽症が搬送の5割弱、入院加療が必要な患者が5割強ですので、救急車の半数は入院が必要であり、逆を言えば半数は入院が必要ないのです。この軽症の中にも救急車のコール時は自分で動けずに病院の処置で改善したケースもあるでしょうし、救急車利用が適切なケースもあります。
ただ救急車をタクシー代わりに呼ぶ患者さんも一部にはいます。金銭的な負担ということでタクシー代わりの方にはタクシーより救急車の方が高額であるという認識を持ってもらう必要があるのではと思います。
以前、韓国の研修医辞職問題から 初期研修医時代を振り返る そして日本の医療は?!の「理不尽な救急外来」に記載していますが、便秘でのタクシー代わりの救急車利用の常連さんなどそれに類似した症例が来ると救急外来を担う医師側は意気消沈します・・・病気は時間を選ばずなるのですから、急患対応は必要ですが、日中に仕事で薬が取りにこれなくてきたという救急外来受診者もいます。
世界では救急車は有料が多い
2023年の男の隠れ家の記事「海外では救急車が基本有料! 日本と海外における救急車の料金比較」から一部抜粋させていただきます。(https://otokonokakurega.com/meet/curiosity/78341/)円安のため下記の料金よりは高くなっている可能性があります。
日本だけでなく、イタリアやイギリスなど一部の国では、条件付きではあるが無料で救急車が提供されている。しかし、それ以外の多くの国では基本的に有料だ。該当する主な国は以下の通りである
アメリカ 約300ドル これは州によって料金が異なり、ニューヨークなどの地域では、搬送される距離や救命士の同乗の有無に応じて料金が前後する。
ドイツ 州によって料金が異なり、料金設定は2〜7万円と幅広い。ただし、ミュンヘンなどの一部地域では、医師から指示があった場合のみ料金が無料になる。
オーストラリア 州によっては救急車を無料で利用できるが、基本的に料金はかかると思っておいたほうが良い。なぜなら、1回の要請で16万円近く請求されることがあるためだ。地方からの場合は、さらに高額な料金がかかってしまう。
フランス 利用した時点で約8,000円の料金がかかり、1キロ移動するごとに約300円加算される。
中国 基本有料だが、ほかの国に比べると料金はさほど高くない。北京の場合は3キロまで約830円で、それ以降は1キロあたり約115円加算される。北京での救急車の利用料金は、救急・救命費、救急車走行費、その他のサービス費用の3つで構成されており、重症の場合は一部保険適用となる。
https://otokonokakurega.com/meet/curiosity/78341/
日本でも例えば2~5万円という利用料金として、入院し経過重症で救急車搬送が適したというケースは無料化や1割など後から払いもどすなどはどうだろうか。
命に値段はつけれらず、とはいっても救急医療は有限の資源、人材の素で成り立っており、その限界、疲弊が叫ばれている中では金銭的な負担があることで、自家用車やタクシーを利用して病院を受診しようという軽症患者への動機付けにもなるのではないか。
三重県松坂地区の選定療養費の取り組みが6月1日より開始
三重県松坂市で「三基幹病院における選定療養費について」(https://www.city.matsusaka.mie.jp/soshiki/24/sennteiryouyouhi.html )より転載します。
松阪地区広域消防組合の救急出動件数は令和5年には過去最高の16,180件となり、救急体制、救急医療はひっ迫している状況です。このような状態が続くと、「助かるはずの命が助からない」事態が発生することが考えられます。
https://www.city.matsusaka.mie.jp/soshiki/24/sennteiryouyouhi.html
まずはかかりつけ医、地域の医院・診療所等を受診し、医療機関の機能・役割に応じた適切な受診が実現するよう、救急医療体制のあり方を検討しました。
松阪地区において、病院と地域の医院・診療所等の機能分担の推進と地域の救急医療を守るため、令和6年6月1日(土)より、救急車利用の場合であっても、三基幹病院(松阪中央総合病院・済生会松阪総合病院・松阪市民病院)における選定療養費の運用は以下のとおり実施しています
【選定療養費とは?】
https://www.city.matsusaka.mie.jp/soshiki/24/sennteiryouyouhi.html
「初期の診療は地域の病院で、高度・専門医療は大きな病院で行う」という医療機関の機能分担を目的に設定された制度です。紹介状を持参せず200床以上の地域医療支援病院を受診した場合に患者様に負担いただく費用が義務づけられており、現在三病院においても7,700円(税込)にて運用を行っています。
この場合は救急車だからではなく救急外来に来院された患者さんはという話ですので救急車が無料ということには変わりません。
子供が休日腹痛で救急外来の受診をしたときの話(我が家)
以前子どもが持続する腹痛で普段とは違う様子に休日診療所を頼りに自転車で開始時刻に訪れました。そして窓口で既往歴など伝えると「うちでは見れないので救急病院に行ってください」と門前払いを受けました。診療もされませんでした。救急病院の電話番号は見せてくれましたが、診療もしていないので紹介状ももらえません。憤慨しつつその診療所より近い救急病院へ電話をしました。
救急受診はできますが、診療費と別に時間外選定療養費の約1万円がかかりますがよろしいですか?
費用はわかりました。これから受診に伺います。
こちらは子どもの腹痛が続いており、急性疾患の可能性もあるため受診させてほしいとお願いし、さらに自転車を走らせました。
その救急病院で小児科医の診察やレントゲン検査を受けて大きな問題はないとのことで帰宅となりました。子どもですが時間外選定医療費は保険診療とは別ですので小児でも負担がかかります。1万円を支払いました。
ただ費用がかかりましたが休日に診療を受ける必要があると自分は判断したので結果軽症でほっとしたため、1万円の費用は軽症にもかかわらず休日診療を受けた代償と考え納得しています。
救急車を呼ぶか迷うときには#7119(全国利用ではない)
総務省消防庁より「救急センター安心事業(#7119)をもっと詳しく!」より図と文章を引用します。(https://www.fdma.go.jp/mission/enrichment/appropriate/appropriate007.html)
「すぐに病院に行った方がよいか」や「救急車を呼ぶべきか」、悩んだりためらわれた時は、救急安心センター事業(♯7119)に電話してください!
ただ残念ながら日本全国どこでも利用できるわけではありません。赤とピンクエリアが実施されている地域です。
ちなみにお子さんは#8000 です 子ども電話相談事業(https://www.mhlw.go.jp/topics/2006/10/tp1010-3.html)より図を転載します #7119同様に全国展開はされていませんので利用できる場所か確認しておきましょう。
救急車有料化と選定療養費は別の話
救急車の有料化で軽症の利用者の手軽なコールを減らすことと、選定療養費で軽症で休日夜間の時間外に手軽に受診する方を減らすこと、どちらも医療資源、医療者の負担を減らすことが目的です。
ただし、支払先が選定療養費は搬送先の病院で救急車利用とは別の話になります。
この問題は他国と照らし合わせても高齢化が進む日本では今後さらに救急車利用の増加傾向が考えられます。やはり費用負担は考える時期ではないでしょうか。
その救急車、本当に必要ですか?
急病で救急車利用はもちろん必要です。ただもし呼ぶのを迷っていたり、自分でも行ける場合にはかかりつけの病院へ受診相談をして自家用車やタクシーで向かうことも考えましょう。#7119、#8000の利用も検討ください。
急な胸痛や四肢の麻痺は一刻も争う可能性があるので迷わず救急車です。迷った上での利用はよいのです。迷わずタクシー代わりでの利用はおやめください。
軽症の方の救急搬送が増えるほどに現場は疲弊し、そのうち救急外来がパンクしたり閉鎖してしまう可能性もあります。現に現場を担うスタッフは疲弊して辞めていっています。私も若いころはその一端を担ってきましたが、年齢や家庭、もろもろあり離れました。
金銭的負担で現場の消耗が減り、適正な救急外来運営ができればと願っています。