猛暑の6月、7月となっています。もう外出中に水なしでは生きていきません!
家庭で蛇口をひねると水ができます。その水はたいていは浄水場から水道管を通ってきています。
その水が人体に害かもしれません・・・
子どもたちへの影響は?外の公園のじゃぶじゃぶ池の水は大丈夫?
PFASについて耳にするけれどもよくわからない方向けになります。
蛇口から出てくる水のルーツを知る
まずは仙台水道局のキッズページ「みずはどこからくるの?」から画像を転載させていただきます。(https://www.suidou.city.sendai.jp/nx_html/08-kids/08-201.html)水は川からダムなどから取水されれ浄水場を経由して排水管を通って家庭にやってきます。地下水は水質が問題なければ井戸水になりますが、適切な処理をすることで飲料水としても利用が可能だとのことです。
お子さんと水について知るチャンスです 「のぞいてみよう しぜんがかく みず」などお子さんと絵本を読んでみるのはどうでしょうか?
絵がきれいで川の水、地下水について、まだ人の体には大人は水が60%(男性)、子ども65%と記載があり、じゃくちの水、自分の中の水を学べます。また「日本では1人が1日につかう水の量は2Lのペットボトル110本分(約220L)」と紹介されて、どの場面でどの程度利用しているかが描いてあって大人にもハッとさせられます。この本は2019年に発行されていますが、日本地下水学会(https://jagh.jp/)が2019年に学会60周年を迎えて、絵本の監修をされています。
PFASとは何ですか?
最近「PFAS」(ピーファス)という物質が地下水から目標値を超えて検出されているというニュースを耳にします。なんだかよくなさそうだけれど、耳慣れないのでよくわからない。調べてみましょう。
PFASとは4730種を超える有機フッ素化合物の総称。自然界で分解しにくく水などに蓄積することがわかったほか、人への毒性も指摘されており、国際条約で廃絶や使用制限しています。PFASのうち「PFOS」と「PFOA」は水や油をはじき、熱に対し安定的な特性があることから、消火剤やフライパンのコーティング剤などに使われてきました。国内でも2021年までに法令で製造と輸入を原則禁止。21年度に実施した河川や地下水の調査では、31都道府県のうち13都府県81地点で暫定的な目標値を上回る高い濃度が検出されました。PFOSやPFOAが混ざる水を飲まないよう自治体が井戸の所有者に指導や助言をしています。
日本経済新聞 https://www.nikkei.com/topics/23020106
PFASのうち古くから使われてきた「PFOS」が2009年から、「PFOA」が2019年から、「PFHxS」は2022年から、国際条約(ストックホルム条約・POPs)で製造・使用・輸入が禁止された。
その健康影響のリスクについて、去年12月、WHO(世界保健機関)はPFOAとPFOSについて発がん性評価を引き上げた。
PFASと健康影響との関連について、海外の研究では「脂質異常症」や「腎臓がん」「抗体反応の低下」「乳児・胎児の成長・発達への影響」などが指摘されており、国際的な関心が高まっている。
2024年6月NHKみんなでプラス、クローズアップ現代の取材ノートhttps://www.nhk.or.jp/minplus/0121/topic097.html
NHKクローズアップ現代では2023年4月に放映されており、解説がわかりやすいので参照ください。→https://www.suidou.city.sendai.jp/nx_html/08-kids/08-201.html
歯磨きのフッ素は大丈夫?
日常では歯磨きでフッ素含有の歯磨き粉を使用するご家庭も多いと思います。安心してください。フッ素化合物ですがPFASとは異なり自然界にも存在する無機フッ素化合物です。昨年3月日本小児歯科学会 小児保健委員会より「PFAS と歯科で使用する無機フッ素化合物について」下記資料が公開されており、転載します。(https://www.jspd.or.jp/recommendation/pdf/202303.pdf)
環境庁からの報告
環境庁から2023年7月時点でPFOS、PFOA に関するQ&A集 が出ています。 「PFOS、PFOAに関するQ&A集」及び「PFASに関する今後の対応の方向性」等について(https://www.env.go.jp/press/press_01977.html)、こちらを参照します。
冒頭には「環境省や都道府県等が実施した調査において、河川・地下水等の水環境で PFOS、PFOAの暫定目標値(50 ng/L)を超過する事例が確認されており、PFAS のうち特に関心が高い PFOS、PFOA については、住民の不安に寄り添い透明性を確保しながら適切な情報発信を行っていく必要があります。」と記載されています。
有機フッ素化合物のうち、ペルフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物を総称して「PFAS」と呼び、1万種類以上の物質があるとされています。PFASには炭素鎖の長さが異なる複数の同族体が存在し、その物性は炭素鎖の長さで大きく異なりますが、中には撥水・撥油性、熱・化学的安定性等の物性を示すものがあり、そのような物質は撥水・撥油剤、界面活性剤、半導体用反射防止剤等の幅広い用途で使用されています。 PFAS の中でも、PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)、PFOA(ペルフルオロオクタン酸)は、幅広い用途で使用されてきました。具体的には、PFOSについては、半導体用反射防止剤・レジスト、金属メッキ処理剤、泡消火薬剤などに、PFOAについては、フッ素ポリマー加工助剤、界面活性剤などに主に使われてきました。 PFOS、PFOA には、難分解性、高蓄積性、長距離移動性という性質があるため、現時点では北極圏なども含め世界中に広く残留しています。そして、仮に環境への排出が継続する場合には、分解が遅いために地球規模で環境中にさらに蓄積されていきます。環境や食物連鎖を通じて人の健康や動植物の生息・生育に影響を及ぼす可能性が指摘されています。
PFOS、PFOA は、動物実験では、肝臓の機能や仔動物の体重減少等に影響を及ぼすことが指摘されています。また、人においてはコレステロール値の上昇、発がん、免疫系等との関連が報告されています。しかし、どの程度の量が身体に入ると影響が出るのかについてはいまだ確定的な知見はありません。そのため、現在も国際的に様々な知見に基づく検討が進められています。国内において、PFOS、PFOAの摂取が主たる要因と見られる個人の健康被害が発生したという事例は確認されておりませんが、環境省は厚生労働省と連携し、最新の科学的知見に基づき、暫定目標値の取扱いについて、専門家による検討を進めています。
PFASの国内基準は1Lあたり50ナノグラムです
2020 年に設定された日本の水質の暫定目標値(50 ng/L)は、当時の科学的知見に基づき、体重 50 kg の人が水を一生涯にわたって毎日2リットル飲用したとしても、この濃度以下であれば人の健康に悪影響が生じないと考えられる水準を基に設定されたものです。となると体重が50㎏よりもっと重く、さらに2L よりも多く水を飲む人はこの目標値を越えて摂取する可能性があります。
WHOでは2022 年に暫定ガイドライン値としてPFOS 100 ng/L、PFOA 100 ng/L を提案。総 PFAS は 500 ng/L を提案。アメリカでは2023 年に、現時点での分析能力(定量下限4ng/L)を考慮して PFOS 4 ng/L、PFOA 4ng/L とする規制値案を公表。2023 年末までの規制値の決定を目指すとしている。詳細はhttps://www.env.go.jp/content/000123230.pdfを参照。
PFAS汚染地域は?
下記はNHKで作成されたPFAS汚染全国マップで赤:暫定目標値50 ng/L超,黄色:50 ng/L以下、青:報告下限未満、灰色:報告なしとなり、環境省が公表した令和4年度の自治体による河川や地下水などのPFASの調査結果をもとに、都道府県に取材した結果を反映させたものです。引用元→(https://www3.nhk.or.jp/news/tokushu/20240612/pfasmap/#4/35.69/138.83)
引用元の画面からになりますが、このMAPをクリックしていくと大阪府や沖縄県でPFASが高いところが散見されます。2023年5月のNHKみんなのプラス「追跡 “PFAS汚染” 高濃度地域 住民に不安広がる」の中から引用します。
最新の調査(2022年8月)で最も高い値が確認されているのは、市内に住む男性が所有する畑で、家庭用の野菜や果物を作るために使っていた井戸水です。3年前、井戸水のPFAS濃度が指針値の440倍=22000ng/Lにのぼっていたことが判明。その後の調査でも毎年20000ng/Lを超える値が検出され続けています。また、研究者が詳しい調査を行ったところ、土壌や野菜などからも相次いで検出されました。(京都大学 小泉昭夫名誉教授・原田浩二准教授調べ)
※環境省のデータに反映されていない府の調査の数値です。環境省データでは最大値が大阪市の5500ng/Lとなっています。さらに2021年、工場周辺の住民を対象に行われた血液検査でも、男性の血中からは128.1ng/mLのPFASが検出され、アメリカの学術機関全米アカデミーズが示した「PFAS臨床ガイダンス」で、特に注意が必要とされる指針値20ng/mL(PFOSなど7種類のPFASの合計値)を大きく上回っていました。男性を含め検査を受けた9人全員がアメリカの指針値を上回り、5人が100ng/mLを超えていました。
血中濃度の高さはPFASを含んだ野菜を食べていたことが原因なのではないか-。健康への影響を心配した男性は野菜作りを諦めることにしました。
摂津市内のPFAS汚染の主な原因とされているのが、空調機器の大手メーカー、ダイキン工業淀川製作所です。この工場ではフッ素樹脂やゴム製品の製造に必要な助剤など、1960 年代後半からPFASの一つPFOAを製造・使用してきました。
https://www.nhk.or.jp/minplus/0019/topic133.html
都内はどうか?
都内在住のため東京都をピックアップしました。前述の全国マップや居住都道府県の発表をもとに、自分の居住地の状況がどうか、各自チェックをしてみてください。
東京都の井戸水に関しては令和4年度の地下水の調査結果(https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/kankyo/r4tougou3)を転載します。基準値を超えたところが黄色となっています。
さらに3月に令和5年度の報告がされています。(https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/documents/d/kankyo/gaikyoutougou3-4)速報値ですが令和4年度よりも全体のおよそ3分の1にあたる21の自治体で、国の暫定の目標値を上回る値が検出されていたことがわかりました。(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240329/k10014406601000.html )
水道水は?
前述の調査結果は、地下水の水質調査のため家庭の蛇口から出る水道水とイコールではありません。水道水はどうでしょうか?7月3日付のMBSニュースより引用します(https://www.mbs.jp/news/feature/specialist/article/2024/07/101041.shtml#:~:text=%E6%B0%B4%E9%81%93%E6%B0%B4%E3%81%AB%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%A6%E3%81%AF%E3%80%81%E4%BA%AC%E9%83%BD,%E9%96%8B%E7%99%BA%E3%81%95%E3%82%8C%E3%82%8B%E3%81%AE%E3%81%8B%E3%81%A9%E3%81%86%E3%81%8B%E3%80%82)
環境省や国交省は全国の水道事業者に対し、今秋までにPFASの検査状況を報告するよう要請しました。これまでも、大きな浄水場などでは独自に検査をし、公表しています。自治体の水道局のHPなどで確認が可能です。大阪府内の浄水場におけるPFOS・PFOAの検出状況を調べると、昨年度は1リットルあたり10ナノグラム前後(1年間の平均値)となっていて、日本の基準はクリアしています。
日本の水道水は大丈夫?煮沸消毒しても除去されない化学物質「PFAS」が”やっかい”な3つの理由
この秋に全国の水道での検査報告が出るということになります。どうなるのでしょうか・・・
公園の池にも汚染が・・・
子どもが水遊びをする公園にもその影響が出ていました。2020年の琉球新報からの記事の引用になります。
沖縄県宜野湾市は6月上旬、市真志喜にある「わかたけ児童公園」内の池への立ち入り禁止を呼び掛ける看板を設置した。有害性が指摘される有機フッ素化合物(PFAS)が高濃度で検出されたことが要因。公園を訪れた人からは不安の声が上がっている。
昨年12月の県環境保全課の調査では、公園内の池から1リットル当たり690ナノグラムのPFOSとPFOAが検出された。国の暫定指針値(同50ナノグラム)の13・8倍となっている。公園内の池は、米軍普天間飛行場の西側にある湧き水「シチャヌカー」から水を引いている。
https://ryukyushimpo.jp/news/entry-1137770.html
米軍基地との関連
前述の汚染マップの中では沖縄の嘉手納町、公園の件の宜野湾市、都内の立川市での地下水の高濃度検出については近郊の米軍基地との関連が示唆されています。もちろん基地と離れていてもPFASが高濃度のところはありますので米軍基地が単独でPFASの原因ではありません。
2024年6月NHKみんなでプラス、クローズアップ現代の取材ノート、「未公表のPFAS漏出事故があった」アメリカ軍・横田基地の現役職員が告発より引用します。(https://www.nhk.or.jp/minplus/0121/topic097.html)
国分寺市や立川市など、東京の多摩地域の地下水から高濃度のPFASが検出。専門家と市民が血液検査を実施するなど、住民の間に不安が広がっている。汚染源の1つである可能性が指摘されているのが、アメリカ軍・横田基地。アメリカ軍が航空機火災などに使う「泡消火剤」にPFASが含まれていたためだ。アメリカ本土でも問題視されていて、現在、アメリカ軍は原料にPFASを含まない泡消火剤への切り替えを進めている。ただ、かつて基地から漏出したPFASが、今も周辺の土壌や水源を汚染している可能性が危惧されている。
去年7月、アメリカ側は「横田基地内で、これまでに3件、PFASを含む泡消火剤の漏出があった」と日本側に情報を提供。さらにこの3件とは別に、泡消火剤が基地内に漏れ出たケースがほかにも4件あったことが、NHKがアメリカ空軍に対して行った情報公開請求で新たに発覚。実態が少しずつ明らかになりつつある。
去年1月、重大な漏出の事案が起きた。「当時は1月下旬だったので、水道のパイプが凍結して破裂してしまった。そのパイプにはPFASが含まれている可能性がある水が入っていると分かっていたので、基地の兵隊たちは本当に対応が早く、なるべく外に流れでないように対応はしていました。その後、検体をとって分析をして、PFOSとPFOAが検出されたと聞いています」
PFASを減らすために
PFOS含有の消火器の製造、販売は2010年以降はないのですが、まだそれ以前に製造されたPFOS含有消火器剤が各所にあるそうです。
東京都では、都内における新たなPFOS排出リスクの低減を目的として、都内のPFOS含有消火薬剤の交換を進めるため、全国初の事業を開始します。
本事業では、都内に駐車場を有する事業者等を対象に、PFOS含有泡消火薬剤を交換する際の新しい消火薬剤の購入費及び撤去した消火薬剤の処理費などを補助します。
https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/water/groundwater/sonota
PFASの除去について
では除去についてはどうか?「飲料水中の PFOS 及び PFOA」WHO 飲料水水質ガイドライン作成のための背景文書(厚生労働省水道課仮訳)(本背景文書は、2022 年 9 月 29 日に公表されたパブリックレビューバージョンであり、確定された文書ではない。)より引用します。
原水からの PFOS 及び PFOA を含めた PFAS の除去の効率は、その濃度、水の汚染具合、利用可能な処理方法、PFAS の種類の特性に依存する。多くの浄水場では、PFAS 除去に最適化されていないため、除去率は大きな違いが生じる。PFAS は、高い安定性がある物質であり、化学的、生物学的酸化に耐性がある。結果として、凝集沈殿ろ過、オゾン処理、消毒処理のような共通して使われている浄水プロセスでは PFAS 除去は効果的でない。これらのプロセスでは 0-5%の除去と報告されている(Crone et al.2019)。最適注入率、pH 調整を行った強化凝集で PFOS 及び PFOA を 30%程度除去できるかもしれないが、これは原水の水質に依存する(Xiao et al.2013)。浄水処理として利用可能な条件での促進酸化プロセス(AOP 例えば UV/H2O2)は限られた PFAS で 15%程度除去できることが報告されている。水処理会社は、酸化プロセス(例えばオゾン、塩素処理、AOPs)は、浄水処理後の水で PFAS 濃度が上昇してしまう原水中のポリフッ化物前駆化合物を酸化することを知っておいた方がよい。最近、PFAS の分解を期待される方法として、還元プロセスが現れている。
いくつかの PFAS について高い除去を行えるものとして、高圧膜処理、イオン交換樹脂処理がある。
活性炭処理は、PFASの除去に有効であることが証明されている(Duら、2014年)。
https://www.env.go.jp/content/000106027.pdf
また昨年には有機フッ素化合物(PFAS)の浄化装置宜野湾市の湧水公園に導入というニュースもありました。採用された流機エンジニアリングからの記事になります。(https://www.ryuki.com/wp/wp-content/uploads/2023/07/9dbc32d482116e9bcdea06b1d8255e93.pdf)
今後の健康への影響が心配されます
PFASの存在を認識して今、地下水利用者では早急に自分や子どもたちの使っている水がどうなのか調べる必要がありますし、この秋に予定される全国の水道事業者の結果報告にも注目します。
現在その健康への悪影響が曖昧な面があり、この日本で設定された基準値がはたしてそのままでいいのか、将来的には低い基準へ変更される可能性もあります。基準値を下回っても安心はできません。
他人ごとではないですし、また長く残留するため、高濃度地域ではPFAS除去のためには費用がかかります。PFASの製造品を使用しないこと、変更すること、水の安全使用のために国が先導して真摯に対応してもらいたいと思います。
ここ最近もPFASについては報道で取りざたされていますが、紅麹関連サプリ問題のように厚生労働省も主導して世間全体で注目を浴びている話題ではないように思います。何か思惑があるような気もしますが、今後子どもたちの健康にまで及ぶ大問題です。地元や故郷がどんな状況か?そしてその原因は何か?個人レベルでもチェックしていきたい重要な問題と思います。