学生時代に空気感染するウィルス3つ:マスイケツと覚えました!麻疹、水痘、結核の3つです。
いま麻疹が増加中。マスクでは防げない。免疫をもっていないと誰もが感染するリスクにあります。
今回は麻疹感染拡大に関心がある方向けですが、妊娠希望や海外旅行予定の方もチェックしてほしいです。
空気感染はやっかいもの!マスクで予防できない感染症(N95マスクならOK)
麻しんウイルスの感染経路は、空気感染、飛沫感染、接触感染で、ヒトからヒトへ感染が伝播し、その感染力は非常に強いと言われています。免疫を持っていない人が感染すると、ほぼ100%発症し、一度感染して発症すると一生免疫が持続すると言われています。
麻しんは感染力が強く、空気感染もするので、手洗い、マスクのみで予防はできません。
厚生労働省HP https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/measles/index.html
麻しんの予防接種が最も有効な予防法といえます。また、麻しんの患者さんに接触した場合、72時間以内に麻しんワクチンの接種をすることで、麻しんの発症を予防できる可能性があります。
つまり過去に麻疹に感染しているかワクチン接種で抗体をもっていないと誰もが感染する可能性が出てくる恐ろしい感染症です。
麻疹とは?
皆さんのイメージは発疹と発熱だと思います。ところがはじめは発疹はなく、風邪っぽいので会社に出勤したり、外出してしまうことが多いのではと思います。発疹は癒合することが特徴的です。
感染すると約10日後に発熱や咳、鼻水といった風邪のような症状が現れます。
2~3日熱が続いた後、39℃以上の高熱と発疹が出現します。 肺炎、中耳炎を合併しやすく、患者1,000人に1人の割合で脳炎が発症すると言われています。
死亡する割合も、先進国であっても1,000人に1人と言われています。
その他の合併症として、10万人に1人程度と頻度は高くないものの、麻しんウイルスに感染後、特に学童期に亜急性硬化性全脳炎(SSPE)と呼ばれる中枢神経疾患を発症することもあります。
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/measles/index.html
亜急性硬化性全脳炎とは?
亜急性硬化性全脳炎(SSPE)については治療法がなく、稀ですが厄介で指定難病になっています。→https://www.nanbyou.or.jp/entry/42
学業成績低下、記憶力低下、いつもと違った行動、感情不安定、体がビクッとなる発作、歩行障害、字が下手になったなどで気がつかれることが多いです。
https://www.nanbyou.or.jp/entry/42
国家試験での知識としては知っていますが実際に患者さんを診療した経験はありません。麻疹の予防接種により発症者は減っていますので、やはり麻疹の予防接種による予防が重要になってきます。
妊婦さんの注意点は?
妊娠予定の女性の方は前もって、風疹や麻疹の抗体を確認し、抗体がない場合には後述するMRワクチン接種しておくことをお勧めします。どちらも生ワクチンのため妊娠中は接種できません。
妊婦さんは風疹のような胎児への影響は少ないといわれますが、麻疹に罹ると脳炎などの重症化する可能性があり、流産、早産のリスクも増えます。生まれた赤ちゃんへ抗体移行がないために、赤ちゃんの予防接種をする前に麻疹にかかる可能性もあります。
麻疹は世界では流行中→海外旅行先でどうか?
厚生労働省HP(https://www.mhlw.go.jp/content/001221745.pdf)より下図転載
昨年はアフリカ大陸、アジアで流行が見られています。現在国内での感染が連日報道されていますが、この渡航先で麻疹に感染して持ち帰る可能性は今後もあるわけです。
流行地域への渡航では事前にワクチン接種を
はしかはヨーロッパや東南アジアなどで流行していて、国内では先月下旬、UAE=アラブ首長国連邦から関西空港に到着した旅客機に乗っていた、大阪府、愛知県、岐阜県に住む男女合わせて5人の感染が7日までに確認されました。(この後8名まで感染が増えています)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240308/k10014383291000.html
遊びでも仕事でも該当の地域に行く際にはワクチン接種が推奨されます。今回麻疹に罹患された方が現地で感染して発症したのかはわかりませんが、本来抗体をもっていれば発症しなかったはずです。
つまり、渡航前にワクチン接種を、国内でも感染拡大を見越して抗体がない方は予防接種が推奨となります。
成人のワクチン接種は自費 麻疹風疹ワクチンか麻疹ワクチンか?
風疹のワクチン接種の話もしましたが、風疹と麻疹は合わせてMRワクチンという混合ワクチンもあります。もしどちらの抗体も持っていない、という場合にはMRワクチン接種を打ちましょう。自費で1万円程度かかります。
風疹の抗体があるという場合は麻疹単独のワクチンでこちらは6千円代が多いようです。接種回数は過去に感染がなく接種1回の方は1回、接種歴がない場合には2回が推奨されます。
大人のワクチン接種はどこで?
かかりつけの病院、クリニックに問い合わせをしましょう。
かかりつけでは打てない、もしくはかかりつけがない場合には、大人の予防接種で検索するとトラベルクリニックがヒットします。「麻疹ワクチン、MRワクチン接種可能な病院」で検索して上がる病院に在庫を確認の上、接種に行くのがよいと思います。輸入ワクチンでMMRワクチンというおたふく風邪も合わせた混合ワクチンが接種できるクリニックもあります。
生ワクチンのため、1歳未満の乳児、妊娠中は接種できません。免疫不全の病気がある、免疫抑制治療の方は接種可能か主治医に相談しましょう。
医療者は麻疹抗体チェック済が多い 自分は幼少期に罹患して免疫あり!
私個人は麻疹には1984年の日本で麻疹の流行のときにかかっているので、入職前に確認した抗体検査では有効な抗体があると確認しています。
医療者は麻疹患者さんと応対する可能性があるため、大きい病院では入職前に検査をするように言われて抗体がないと追加接種するように言われています。
今回のような麻疹患者さんの発生があると、医療者として抗体を調べておいてよかったと思います。おそらく麻疹の診断をする医療機関では抗体がある医療者が応対しているはずです。ただ患者さん本人が麻疹かもしれないと伝えて病院に来ていない場合は抗体がない医療者が対応する可能性もあり、病院内での感染の広がりというのも心配です。先に言ったように麻疹は空気感染のため、麻疹と思われると病院到着後より一般患者さんと同席しないように隔離対応で診療しますが、そうでないと待合室で麻疹患者さんが診療を待っていて、その待合にいた他の患者さんたちに感染が拡大します。
感染症に翻弄される世界
新型コロナウィルス発生のときには対岸の火事にはじめは思っていましたが、2020年のダイアモンドプリンセス号を皮切りに国内でも感染拡大がありました。全国で渡航や集会の自粛、登校の自粛などまで必要になるとは思いませんでした。
麻疹も感染拡大すると空気感染という感染経路のためコロナ以上に大問題となると思います。抗体がない場合にできることはワクチン接種ですが小児の定期接種分は確保されているでしょうが、成人分として用意は不十分でしょうから、供給側の問題が出てくると思います。これ以上、麻疹が広まらないことを祈るばかりです。
とにかく麻疹はワクチン接種をすること!
ワクチン接種の確認は母子手帳ですが、かかったかどうかわからないときは血液検査で抗体価を調べることはできますよ。
自分のためにも周りのためにも行動しましょう!