震災と透析医療 東日本大震災を振り返って

元旦に能登半島地震が起きました。被災者の方の健康、また医療現場やライフラインが心配されます。現に断水、停電の影響で透析患者さんが近隣へ移動した情報をニュースでみました。

震災と関連して東日本大震災当時のことを思い出し、透析に限定となりますがその時の医療のことに触れたいと思います。

東日本大震災と医療(被災地ではないエリアから)

2011年3月11日はどこで何をしていましたか?

私は地方病院に勤務しており、院内にいました。かなりの揺れに近くの透析室に異常がないか確認しに行きました。海沿いでしたが幸い津波はなく、病院への被害もありませんでした。

被災した透析患者さんはどこで透析を?

震災の時に被害を受けた透析患者さんはどうしたでしょうか?

透析には血液透析と腹膜透析の2種類があり、腹膜透析は自宅などで行えるためあらかじめ透析液など物品があれば震災の際も透析が継続できる可能性が高いです。

ですので震災で透析困難となるのは血液透析の患者さんが大半です。

血液透析では1分間に500mL程度の透析液が必要で、1回の透析時間は4時間で通常週3回行います。その透析液はRO水という不純物を取り除いた純水です。震災で断水、停電していると血液透析は受けれないのです。ですので病院が倒壊など物理的な被害と受けなくても、間接的な停電や断水、透析室が利用できない場合は透析難民は発生するのです。

有事の場合には水は飲料水、生活用水としての重要性から透析医療への水という点では二の次になりやすい状況です。

透析患者さんは尿がでない方が多く、カリウムが上がりやすいため、震災時は透析がいつできるかわからないので水の制限とカリウムを下げるお薬を透析施設よりお守りがわりに処方され、持っていることが多くあります。

透析難民さんの受け入れ先は大震災でなければ近隣の停電や断水がない病院で対応が可能かもしれませんが、難民数が多く、かつ被災地が広範囲ですと都道府県をまたいで透析の受け入れ先を探す必要があります。東日本大震災では1300人の方が他の地域で透析を受けたそうです。

透析学会より震災時の透析患者さんへの向けの資料があります。→透析学会から関連PDFより表を引用:https://www.jsdt.or.jp/tools/file/download.cgi/1936/HP%E4%B8%80%E8%88%AC%E3%81%AE%E3%81%BF%E3%81%AA%E3%81%95%E3%81%BE%E3%81%B8%EF%BC%9A%E9%80%8F%E6%9E%90%E6%82%A3%E8%80%85%E3%81%95%E3%82%93%E3%81%B8%EF%BD%9E%E7%81%BD%E5%AE%B3%E3%81%AB%E5%82%99%E3%81%88%E3%81%A6.pdf

被災した透析患者さんの受け入れ

当時私がいた病院では複数の透析患者さんの受け入れ行い、被災して数日後に患者さんたちが移動してきました。透析室で入浴もできず、久しぶりに透析を受ける透析患者さんの診察をしたことを記憶しています。多くが高齢の方で、ほとんどが単身で遠方から来ていました。血液透析は通常週3回4時間ですが、週2回だったり3時間透析だったりと透析患者さんの数に対応できるよう、必要最低限の透析をしていました。

当時のことは記憶が古くなりましたが、患者さんたちは地元には戻れないものの近隣へ戻られたり親戚や知り合いの地域へ移られていったのだと思います。

透析医療のそれぞれの現場で

いわき市の病院では通常の患者さんに加えて被災された透析患者さんの受け入れを行い、病院の医師は自分の食料も得られぬまま長時間労働を行い、透析医療を支えたと聞きました。

また、透析学会側でも透析難民の方と他の病院での受け入れを調整にてんてこ舞いだったと聞きますし、その後の学会では透析と災害医療は常に1テーマとなり、被災者側の病院と受け入れ方の病院の方の講演会も数多くありました。

能登半島震災について

元旦に起きたばかりの地震も余震が続いており、被害の拡大が報道されています。

震災時に車などの室内で長時間同じ姿勢で過ごしていると旅行者血栓症=下肢静脈血栓からの肺梗塞を起こす方も出てきます。左右差のある浮腫や血栓のリスク(血栓の既往、最近のガンや手術歴、寝ている時間が長いなど)に心当たりがある方は早期の病院受診をお願いします。

極寒の中の避難生活、身体を壊さないようにお祈りしています。付け焼刃で申し訳ありませんが、被災地の方の心身の健康を願っています。

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