韓国の研修医辞職問題から 初期研修医時代を振り返る そして日本の医療は?!

女医ママ
くまさん
女医ママ くまさん

韓国の医学部人数増加問題で専攻医の大量辞職のニュース 

それにしても辞職人数もやることも規模が大きい!

研修医時代のころを振り返りつつ、韓国の問題(辞職ニュース https://jp.yna.co.kr/view/AJP20240305001900882?input=1345r )についても考えたいと思います。医学部志望の方や気になっている方向けです。

自分の初期研修医時代を振り返ります

以前、医師の恰好 白衣vsケーシーvsスクラブ 現在はスクラブ派 で初期研修医時代の真っ白な恰好だったことを触れました。初期研修医のころはそろそろ20年経とうとしています。結構大変だったと思いますし、研修医がんばります!という真面目研修医だったような記憶があります。

初期研修医としてオリエンテーションを受ける1週間

だいたいの病院は入職するとその病院のオリエンテーションの期間があると思います。短いと1-2日、長いと2週間ほど。それを経て職場に医師として出ていくのです。

オリエンテーションで院長や、偉い先生方からの話を聞きます。今でも覚えているは、結構眠くなってしまって頑張って起きて聞いているときに、隣にいた同期の研修医が寝落ちして、院長にげんこつをくらっていたことです。一気に目が覚めましたね。

次々と診療科ローテーションを開始

内科(総合内科+専門内科3科ほど)、外科(一般外科、脳外科)、救急センター、小児科、産婦人科を順々に回っていきます。同期や先輩と1-4人くらいで回るので、一緒に回る研修医とは終わる時間が一緒で近くで夕飯を食べに行ったり、その科の先生に車で連れて行ってもらったりしました。

住まいは病院内

住まいは病院から貸し出されているPHSがつながる病院の敷地内です。病院とつながっていて外にでない作りだったので、はじめの1年目の研修医生活を忙しく終わってふと気が付くと秋になっていました。あれ、落ち葉が、秋だな~というシャレでない状況でした。

夜間の病院、患者さんが寝ても、寝れない当直研修医

病院の点滴は当時は医者がすべて入れることになっていたので、休日で多いときには20件は点滴お願いします!のコールされました。むくんでいて血管が見えない患者様もいたり、だいぶ点滴の腕が磨かれました。

私の外見では点滴手技が苦手そうにみえるそうで、中堅医師となって透析患者さんの細い血管にライン挿入をしたときには看護師さんに驚かれることがありました。

女医ママ
くまさん
女医ママ くまさん

これから医師となる学生さんや初期研修医のみなさん

手技が苦手、不器用でも、何度もすることでうまくなっていきます。逃げずに頑張ってください。

理不尽な救急外来

救急外来はどんな患者さんがくるのかワクワクする反面、間違えれば患者さんの命がかかる重要な場所です。ただ中には平日の外来があいているときにいけなかったから来院する、便秘がつらくて来院するなど、どうみても救急ではない患者さんが混じっていました。そしてアルコール中毒でやってくる患者さん。お酒の匂いがプンプン。

救急車で来院したこんな患者さんもいました。

女医ママ
くまさん
女医ママ くまさん

どうしましたか?

患者さん
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便がでなくて苦しくて。浣腸をしてほしい。

女医ママ
くまさん
女医ママ くまさん

便秘での救急車の利用は控えてください。

患者さん
患者さん

苦しくて動けないから救急車を呼んだのよ。

このような患者さんの中にはもちろん腸閉塞で緊急入院という場合もありますので、一律に便秘で救急車を利用するなとはいいませんが、この患者さんは常習で何度か救急車来院されてました・・・

日本が国民皆保険で診療を一律に受けれること、救急車も無料なこと、生活保護の方は基本医療費がかからないこと、など現体制に不満が出てきます。

救急診療が必要な患者さんに医療の提供をする場であってほしいものの、本当の患者さんと思う方は半分もいない救急外来でした。

また年末年始など医者も休みたい当直は下っ端に回りますし、有無も辞さないので、これは特別給与を上乗せして担当医もうれしい計らいをしてほしいと思います。

韓国の医学部定員増問題が発端→専攻医大量辞職へ

韓国では医師不足の解消のため、医学部の定員を年間2000人に増やすとしたそうです。それに反発して専攻医たちが大量に辞職したという事情になります。

医学生を段階的に増やすのでなく一気に増やすのは非常識です。教室の椅子も足りない、教員も実習受け入れの病院も対応力を越えており、明らかに教育レベルは落ちてしまいます。

医師側の主張に納得してしまい医師寄りに考えますが、増員方向を良しとしても現定員の1割増の300人程度が現実的ではないでしょうか。

そして後にも述べますが医学生が増えたからと言って、医師不足の診療科、地域が潤沢になるわけではありません

韓国政府は韓国の人口1000人当たりの活動医師数は2.51人で、経済協力開発機構(OECD)の平均3.62人に比べて低いと指摘し、増員がなければ今後1万人の医師が不足すると主張している。 一方、医師団体は医師の増加率がOECD国家の平均に比べて高いとして、増員は不要だと反論。さらに、現在は定員3058人の医大生を2000人増やして年5058人とした場合、学生の水準が低くなり結果的に医師の質も落ちるため、定員350人増が適切だと強調する。

https://news.yahoo.co.jp/articles/53da229c81f029b4ed1d6d552a61ceff13ff09cd?page=1

では日本はどうかというと下記のように韓国と同じくらいなんですね。

人口 1,000 人当たり医師数は日本では 2.4 人、OECD 平均は 3.5 人である。

厚生労働省の医師数推計から計算すると、日本の人口 1,000 人当たり医師数は 2030 年前後に 3 人程度になる。

医療関連データの国際比較-OECD Health Statistics 2019-https://www.jmari.med.or.jp/download/RE077.pdf

日本の医学部定員は?→すでに増加、いずれ過剰の予測

医師不足を解決するため、政府は医師数を抑制から増員に転換する方針を定め、2008年度から地域枠を中心に、臨時的に医学部定員を増員することになった。医学部入学定員2007年度の7,625人から2024年度には9,403人となり、このうち、地域枠等を要件とした臨時定員はゼロ人から955人になった。臨時定員以外を含め、医学部入学定員に地域枠等が占める割合は2割弱となっている。なお、自治医科大学は地域枠等から除いている。この結果、医師数は2010年から2020年までの10年間で約4万5,000人増えることになった。一方、医師需給推計によると、2029年頃に医師の需給は均衡し、その後は人口減少に伴い将来的には医師需要が減少局面に入るため、医師過剰になる見通しである。

全日病ニュース https://www.ajha.or.jp/news/pickup/20240215/news06.html#:~:text=%E5%8C%BB%E5%AD%A6%E9%83%A8%E5%85%A5%E5%AD%A6%E5%AE%9A%E5%93%A1%E3%81%AF2007,955%E4%BA%BA%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%81%A3%E3%81%9F%E3%80%82

各医学部の定員は1-2割増え、2016年東北薬科医科大学、2017年国際医療福祉大学に医学部が開設されています。

医師不足というのは科でいえば麻酔科、救急科、小児科や場所は地方、僻地医療であり、美容系や都市部は医師が過剰気味になっています。地域枠で採用され、入学時に思ったことと環境が変わり、その地域に縛られたくないと卒後に思う方もいるでしょうし、日本も順風満帆な状態とはいえません。

韓国と違うのは医学部の増員が徐々にしてきたことで、医療界からの反発はなかったと思います。ただ少子化やAIの発展などから医師過剰にシフトしていくのは将来予想されることです。

医学部女子差別入試から正当な入試へ→女医の増加

2018年に東京医科大学での女子と多浪生への減点が発覚してから、他大学でも医学部の女性、多浪生差別が判明し、その後の入試では医学部における女子生徒数は各大学で増えて、大体4割が女子の割合となります。女性医師数が正当なものになったのを2019年ころとすると6年制で卒業が2025年以降で女性医師の割合が増えていると予想されますね。

育児中のライフワークバランスは?

女医さんは結婚自体には仕事への影響は大きくはないと思いますが、出産、育児でライフワークバランスをどうするか?が問題となります。特に核家族では子どもを夫や家族に預けて当直するというのはなかなか難しくなります。

私自身は1子目の育児中は夫に1歳児をお願いして2カ月に1回程度の当直(病院に泊まる)や休日日直をしていましたが、2子目の育児となってからは幼児2人を夫にお願いして病院にいるというのは難しくなり、そこまでして仕事を優先すべきかも悩み、転職するきっかけになりました。尚、通常の当直は医師人数にもよりますが月4-5回程度はありますので、子育て中で中堅以上の立場のため配慮をしてもらった上での当直、日直回数でした。

周囲の女医さんを見ても、旦那さんの留学に合わせて勤務先を退職をして海外に行く、子育て中心で非常勤勤務に仕事形態を変更する、30-40代で地元に帰って実家の医院を手伝う、開業をするなどさまざまです。総合病院で当直を含めて常勤勤務をする女医さんは稀といっていいほどの人数になります。

稀といったばかりですが、2019年の記事ですが大阪大学産婦人科では男女、子どもの有無も関係なく当直体制をしているとのことで驚きました。

子育て中に当直もしている先輩の私が言えば、圧力になるかもしれないとは思ったのですが、一人一人に『均等に当直できないかな? おうちで相談してもらえない?』と聞いて回っていきました。『やれなくはないですね』と言ってくれて、子育て中の女性医師もみんな均等に当直する体制ができました。

https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/joseiishi-gyne

このような体制をとる病院もあるのですね。

子どもが自立したら復帰できるか?

今後女性医師の割合が増えることで、病院に泊まって病棟や救急外来を担当する当直医の数の不足は懸念されるかと思います。ただ救急外来のことで話したように、本当に医療を必要とする方は実際の救急外来受診よりも少ないです。

子どもが自立後にはハードな対応はできないまでも多少対応できるようになるか?とも思います。ただその年齢が高齢出産の自分には60歳前後となりますので、寝れない救急外来対応は難しいですし、昼夜逆転の仕事で生活習慣病や自分が病気になるリスクもはらんでいます。また現場に60歳前後の女医さんがいて、救急の場の若いスタッフにはやりずらさが出て雰囲気を悪くしてしまうかも・・・と単純にはいきません。

この患者さんに対する医師の充足問題はこれからも続くでしょうし、子育て女医さんの働き方をサポートした考え方も取り入れてほしいですし、男性医師にも育児協力はしていただきたいので社会問題で取り組むものと考えます。

女医ママ
くまさん
女医ママ くまさん

韓国の医師の大量辞職であおりを食うのは患者さんです。

患者さんの手術の延期など、命にもかかわること、単純に辞職という手段で訴えたことは正解とは思えません。ただそれほど切実であると賛同者が多いのでしょうね。

日本でもすでに手薄になる現場や地域が出ています。どうするといいか?

また女性医師の育児中、育児後のワークライフバランスも医師の働き方として重要ですね。

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