「ビーズのおともだち」わかちゃんの本を知る 小児難病患者さんの今 移行期医療という考え方 小児の入院について

小児がん患者さん わかちゃんの絵本読みましたか?

最近ニュースで小児がんを患わっていた わかちゃん(12歳)が本を出版したと知りました(https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240229/k10014373591000.html)。

出版は2年前のことでしたが、ぜひ読んでみたいと思い、早速注文しました(発送まで3週間ほどかかるため、まだ届いていません→予定より早く届いて後日読みました)。そしてこの本の出版後数カ月で亡くなられたとのことでした。病気と闘う中で絵本作家の夢を叶えるという姿に力強さを見出します。自分の子どもと読んで語りたいと思います。

小さいころから闘病している わかちゃん視線の本というので届くのが楽しみです。

今回はお子さんがいらっしゃる親御さん向け、子供のころから難病を抱えてきた方向けの話になります。

小児科から成人への移行期医療

お子さんに関連した医療についてが今回のテーマです。ただ小児のガンや難病の小児患者さん、研修医の頃も専門の病気を診る小児科での研修ではなかったため接点がありませんでした。そして現在も自分が腎臓内科医としてかかわることが全くないのです。そのため目線はところどころ親御さんよりになります。

腎臓内科医としては、小児科への通院を卒業した小児期からの病気をもつ患者さんを担当します。腎臓領域で多いのは、蛋白尿が多くでる病気、ネフローゼ症候群を小児期に発症して成人へ移行すると病院によるかと思いますが15歳から成人の科で見ます。小児から成人への移行となりますので、その間の時期を移行期医療とも呼ばれます。

ただ小児科で成人になるまで診療するという病院もあります。個人的にも手術など同意が必要なものは親のサインが必要ですので、未成年は小児科診療でよいのではないかと思います。いまは18歳で成人として選挙権もありますので、高校生までは小児科、大学生からは成人科の方がしっくりいきます。

小児科から成人の科に移行する場合、お互いにやりにくさがあるかと思います。というのも、例えば小児期のネフローゼの治療方法と成人での治療方法は薬のステロイドの使い方も異なります。何よりも外来に親が同伴することは成人ではほぼないですから。15~17歳は未成年ですし、親が同席して親と治療方針を決める必要があるわけです。

逆に成人が対象の医師は子ども相手でも大人と変わらない態度で応対しますので、子ども側からは医師との距離が急に広がって、冷たいと考えるかもしれません。

移行期医療には注目されている

腎臓学会からも「腎疾患の移行期医療支援ガイド」が刊行されて移行期医療について注目がされています。

 「移行(transition)とは,小児科から成人診療科への転科(transfer)を含む一連の過程(process)を示すもので,小児期発症慢性疾患患者が小児科から成人診療科へ移るときに必要な医学的・社会心理的・教育的・職業的支援の必要性について配慮した多面的な行動計画である」と定義

 移行期医療が必要な理由として,小児期発症慢性疾患患者が成人後に直面する成人特有の病態・疾患に小児科医が不慣れであることや成人後には小児病棟に入院できないことなど,適切な医療環境の提供における問題があげられる。また,社会的・心理的に未成熟な時期の転科は,ノンアドヒアランスの原因ともなる。さらに,小児期発症慢性疾患患者は,社会心理的(結婚,経済的自立など),教育的(最終学歴など),職業的(就労状況など)アウトカムが満足すべきレベルに達していないことが多い。そのため,患者が能力に見合った教育を受け,職業を持ち,そして経済的に自立できるための支援となる移行期医療が必要である。

https://jsn.or.jp/academicinfo/report/IgA_nephrotic_ikoukiguide.pdf

小児期からの移行の患者さん 子どもそっちのけで親がしゃべり続けるケースもある

女医ママ
くまさん
女医ママ くまさん

前の外来からはどうでしたか?

患者さんの親
患者さんの親

子どもは今回こうこうこうです。薬はこうしました。

患者さん
(お子さん)
患者さん (お子さん)

・・・

毎回、お母さんが主体で話すとお子さんはあまり話さないまま、どうしたいのかがよくわからないまま過ぎます。お母さんがおしゃべりなお子さんはだいたい寡黙ですが、お母さんがいなければ普通に話したりできたりとお母さん、前に出ない方がいいです。

ただ中には自分の言葉で伝えてくれるお子さんもいます。

患者さん
(お子さん)
患者さん (お子さん)

今回はこうでした。薬はこうでした。

自分で伝えられるお子さんは病気の管理も自分でできて、要望を外来でしっかりと伝えることもできる方もいます。

そうしたお子さんの中には自分が罹患した病気をきっかけに医学に興味を持って、医学部に入り医者になる選択をする場合もあります。

小児ネフローゼ症候群で通院、治療していた患者さんが医学部に入って、卒業後は腎臓を専攻する選択をしている医師も知っています。医学部の実習は大変なものもありますし、研修医や当直も大変で主治医としては心配もありますが着実に自分の道を進んでいて、誇らしい気持ちになります。

逆に学生時代にネフローゼ症候群を発症したため入退院を繰り返して大学を辞めてしまう患者さんもいます。薬の内服はあっても社会復帰できるケースが多いのではありますが。

中には成人以降も小児科でみる患者さんもいる

小児で脳性麻痺、先天性心疾患など成人科では不慣れな疾患の場合には成人以降でも専門の小児科の先生が見ていく場合もあります。

主治医がそのままずっと診療したいというよりも、成人外来移行をしたくても受け手になる診療科の医師がいなかったり、不慣れでそのまま見てくださいといわれてしまう場合もあるのだと思います。

成人患者さんが小児科へ入院となる場合には小児科ベットでは小さい・・・という事態が起きます。

小児対応の歯科を受診して

話が変わりますが、子どもの歯科ではフッ素塗布やシーラントという虫歯の予防処置があります。引っ越してから子どもを診療する歯科の看板が目に入り、子ども4歳と遅い年齢でしたが受診しました。子どもが好きなアンパンマンが見れたり、終わると風船をもらったり、ガチャガチャができたりと、子どもがとにかく歯科受診が好きになる工夫があります。

自分が小児期に通院していた歯医者では歯型の模型があるくらいで、扉が開くと歯医者さん特有のにおいがして、あまりいい思い出がありません。

小児対応ができて夢のような歯科の存在は子どもの今後の歯科通院にプラスです。

国立成育医療研究センターはこども病院です

冒頭の わかちゃん が入院、通院をした病院は国立成育医療研究センター(https://www.ncchd.go.jp/)というこども病院です。こちらの病院の20年も前になりますが救急外来の研修をしたことがあります。その時に、子ども目線で安全、安心を得られるように配慮した病院だという印象でした。待合室も明るくて病院が怖いというイメージにならない、そんな雰囲気です。

小児の入院で付き添い入院は必要か?→病院によります

コロナの影響もあり、小児科の付き添い入院についてはできないところ、できるところ、必須となるような病院もあります。成育医療センターは必須ではないが付き添える病院のようです。

成育医療センターではない病院に自分の子どもが入院したときは家族の付き添い入院が必須のため、自分がずっと付き添いました。さらに家族が洗濯をもって帰って新しい衣類に変えてくれたり、お弁当の差し入れをしてくれたりで何とか乗り切りましたが、子どもの心配と寝る場所が子どもと一緒だったりと窮屈で足腰が痛くなりました。

現在はコロナの除外のために付き添い場合は入院前にコロナの検査を行って陰性を確認してからだったりと親の負担が増えています。またコロナの影響で家族でも面会があまりできなかったりと、入院している子どもさんは心細いだろうと思います。

親としては子供の不安のために付き添いもしたいが自分の仕事のこと、入院していない子供のこともあり、24時間は大変なのでいいとこどりで、週数回の付き添いと夜間は変えるなどバリエーションOKだと嬉しいです。

患者さん家族に寄り添うドナルド・マクドナルド・ハウス

成育医療センターの敷地内には遠方からの患者さんの家族さんが1日1000円で宿泊できる施設 ドナルド・マクドナルド・ハウスせたがや(https://www.dmhcj.or.jp/jp-house/1536/) があります。こちらは友人がボランティアをしたということを聞いて間接的に知っていました。今回久しぶりに思い出して確認すると、日本マクドナルド社が運営し、コロナで運営資金不足になったときにはクラウドファンディングで資金を集めたりしていました。

病気は誰がなるかわかりません。そしてその病気に詳しい病院が近くにあるわけでもありません。検査や治療のために新幹線など利用してくる患者さん家族もいるのです。子どもが入院したときに傍にいるために、宿泊施設代もばかにならないのでマクドナルドハウスの存在は安心だろうと思います。

このハウスのような患者さんに寄り添う宿泊所は他にもあり、ファミリーハウス( https://www.familyhouse.or.jp/user )も同じように病院近くにあり患者さん家族の宿泊利用が1泊1000円でできます。

成人診療に移行して戸惑う患者さんと家族さん

こども病院はいわゆる子どもに特化して、子どものための視点での環境作りからされていますが、成人になるとこの受け入れ環境がなくなるのでそれだけでも戸惑うのかと思われます。

成育医療センターから成人医療へ移行するために紹介された患者さんは、先方との信頼関係が強いので紹介して来てくださいましたが、初診、再診と話すと、成育医療センターとの違い、成人医療との違和感があったようで定期通院を終了された方もいらっしゃいました。

たいていはお子さん自身との関係がまだ構築できず、親御さんからの判断になるようです。親御さんと医師との関わり、距離、どうしても長年通院してきた小児科の先生との信頼が強いと移行期医療の成立が難しくなります。できればお子さん中心に、お子さんが成人になっていく現実を見て、見守ってほしいと思います。

女医ママ
くまさん
女医ママ くまさん

今回は、わかちゃんの絵本の話から自分の知っている移行期医療、小児を支える医療についての話になりました。小児科医ではない成人診療科側から、そして親としての関わりの点からになります。

親としては安心できる子ども病院はありがたい。ただ子どもの成長とともに、自分で管理できるように親もサポートに回らないといけませんね。

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