SNSで初期研修医と思われるアカウントで「仕事やしんどい、辞めたい」という訴えを眺めながら、顔を見えない人の心配をしています。
5月病かも・・・というに向けて発信します。
大型連休の後の5月病の危険 5月病の正体とは?
ゴールデンウィークどう過ごしましたか?
大学生、社会人と共に、新入生、新入社員にとっては初めての大型連休ですね。暦通り休んだり、大学、企業によっては飛び石ではなくそのまま1週間以上の連休という場合もあると思います。
たいがいは4月に新入学した大学生、新入社員さんはよほどのブラックな状況でなければ実家が遠方な場合は数日故郷に帰ったり、旅行に行ったり、そのまま自宅で過ごす場合ものんびりと4月の慌ただしい日常とは異なる非日常を送ります。
この連休明け、または長期休み明けに心身を崩す方があり、それが5月だと「5月病」と言われますね。
ゴールデンウィーク(春の大型連休)を過ぎた頃に注意が必要なのが、「五月病」です。新入社員や人事異動など環境変化のあった方が、新しい環境への適応がうまくいかず、なんとなく体調が悪い、やる気が出ないなど心身に不調があらわれる状況を言われています。五月病は正式な病名ではありません。医学的には、「適応障害」、「抑うつ状態」などの病気と関係があるとされることが多いです。
心の耳 https://kokoro.mhlw.go.jp/column/sea05/
5月病はいかにも病気の名前のようで、実際にイコールの病名はないのですね。
さて関係があるとされた「適応障害」については雅子妃殿下が昔に患った病気として知った方も多いのではないでしょうか?
日常生活の中で、何かのストレスが原因となって心身のバランスが崩れて社会生活に支障が生じたもの。
原因が明確でそれに対して過剰な反応が起こった状態をいう。日常生活の中で起こった出来事や環境に対してうまく対処できず、心身に様々な症状が現れて社会生活に支障をきたす状態をいいます。
ストレスの原因が明確であることが定義上重要となります。症状はゆううつな気分、不安感、頭痛、不眠など、人によって様々ですが、仕事や学業などを続けたり、対人関係や社会生活を続けることに問題のある状態となります。これらは一般的には正常な人にも現れる症状ですが、適応障害の場合はそれを超えた過敏な状態となります。
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-041.html
5月病について考えていると、日曜夜頃に月曜からの仕事はじまりを考えると憂鬱になる「サザエさん症候群」が思い浮かんできました。これも仕事がストレスに感じるので似た者同士の概念ではないでしょうか。
5月病になりやすい初期研修医
大学1年生は怠くても部活やサークルに入っていたり、これまで目指してきた大学での講義や友人たちと日常生活に戻って立て直しがききやすいかと思います。
しかしながら、初期研修医はどうでしょうか。病院見学や実習で医学生という立場と、現実に初期といっても医師は医師。2月の国家試験までは猛勉強し、その後仕事はじまりまでは羽を伸ばして過ごしてきたことでしょう。この3月までとは明らかに状況が違います。命を預かる立場になり、自分の判断、手技のミスが命取りになる可能性もあります。
病院では電子カルテ入力がメインでそのシステムに慣れる、はっと気づくと患者さんに向かい合うよりパソコンに座っている時間が長い。またその病院特有の指示の出し方、その科特有のルーチンを学びます。4月は入ったばかりで多少甘めに見られていることが、入職1か月が過ぎて「前言ったよね」「使えないな~」など心もとない言葉も言われるかもしれません。
そして我々に課せられるのが夜間の当直、夜間・休日の病棟や救急外来の対応です。夜の病棟も決してノーコールということはありません。せん妄で暴れてしまう、点滴を自分で抜いてしまう患者さんや発熱、腹痛、転倒があって診察を依頼されることもあれば、救急車で来院される、直接車などで来院される患者さんたちもいます。平日日中の病院では医師数は例えば100人近くいるところが、休日や夜間は10人満たないという場合、入院患者さんの数は1日で変わらないので医師人数対患者さん数は激増な訳です。
研修医1年目の5月から救急外来を担当しないケースもあるでしょうが、病院によっては4月から担当する場合もあるでしょう。患者さんへの説明がたどたどしい、質問に答えられないと数は少ないものの罵倒される場合もあります。上級医がついているはずですが多忙で対応が遅れて、初期研修医の初めに患者さんの暴言がトラウマにになり休職する場合もあるのです。
頼るべき指導医、上級医たちは常にはいない
初期研修医が頼る指導医、上級医ですが連絡がとれない時間があります。それは院内では外来診療中や検査中、手術中、バイトで他病院で診療をしている場合や学会で不在という場合です。こういう時、何かると非常に心細い。
私は消化器内科をローテ―ト中に入院で担当していた患者さんが吐血で集中治療室に運ばれ、高カリウム血症で輸液をどうするか、学会で科の指導医たちが留守の間、ワシントンマニュアルや救急的参考書を片手に紋々としていたことを今でも鮮明に覚えています。その時は救命センターの先生も他の患者さん対応に忙しく、聞ける相手がいないので夜中の23時まで患者さんに張り付いていました。確か夜中に指導医から電話が来て、状況を説明して治療や点滴を相談ができました。
初期研修医後になりますが、自分がバイトで1日不在の時は、留守を任せる先生に午後に電話をして患者さんたちの様子を一通り聞き、次の行動を考えました。患者さんが重症の場合にはバイト帰りの夜に病院に寄って、容態を確認します。働き方改革でバイト日や休日に病院に寄って患者さんの様子を確認することは難しくなっているような感じはします。
また自分が指導医の立場となり、学会中には後期研修医から連絡が来て対応したこともありました。学会の発表の合間に病棟での患者さんの経過を電話で聞いて、アドバイスをするのですがそれだけでも研修医の先生は安心します。
初期研修医のはじめのゴールデンウィークはない場合も 自分の場合は?
長い連休は休日の当直や当番が入るので初期研修医の先生には連続の休みがない場合が多いと思います。
自分が初期研修医のときは気づいたら秋頃になっていたので当時は世間はゴールデンウィークなんだな~という感想でしかありませんでした。大型連休もないので5月病になるわけもなかったのです。
当時は1-3か月ごとに新しい科をローテーションし、月末に慣れてきた科に別れを告げ、月初に新しい次の科に行きます。新しい環境はワクワクはしますが、初期研修医はこれを回る科の10回くらい繰り返すので慣れたことには・・・というままならない感がありました。後期研修以降は1‐2年で職場の病院が変わって、1から人間関係や職場の電子カルテやルールに馴染んでいく必要があります。
5月病は当然?
初期研修医の場合には職場の環境がストレス、当直がストレスなどストレスの塊といってもいいので、4月に頑張ってきたものが、GW休みにより気を張っていたものが崩れて、適応障害をはじめとしたメンタルの不調がおきる可能性が大変高いと思います。
そして医師になってぐっすり眠れる人は少ないです。
特に主治医制で夜間も休みもPHSや携帯に病棟のことで電話がかかってくるので、休みとはいえ気が抜けない。電話を絶えず気にする生活は医師になって10年は続きました。
オンオフは大事です。やっとできた休みに寝だめは、遮光カーテンで寝ることはできますがそれで1日終わってしまいかねない事態です。日の光を浴びて、美味しい暖かい温度の食べ物を頂いてができるといいですね。
私は同期同志の愚痴もストレス発散になりました。特に一緒にローテーションで回る同期、1つ上の初期研修医の先生とは色々話せましたし、後期研修医の先生も優しい方が多かったので、職場環境には恵まれていたと思います。
意外にも気さくな看護師さん、姉御肌の看護師さんたちにも助けられましたね。
5月病を起こさないためには?
忙しい職場、かつ新しい環境となってストレスにならないというのは難しいです。ストレスを当然のもの、多少楽しめるといいのだとは思います。
自分は救急科や急変で集まって、患者さん救命のために一丸となることはアドレナリンが出てやる気がでました。その事態は怖くても、その先にあるロールモデルのデキレジ(=出来るレジデント)を目指して進むことができました。
ロールモデルの存在や気分を向上させるものがあると乗り越えられると思います。また衣食住も重要。食事は不規則はなりますが、温かい食事をとること、寝具や衣類は肌触りよくリラックスできるものにしたいですね。
そういえばセレブな研修医の先生が病院のベットが固くて寝れないといってエアウェーブ・ポータブルを持ってきていました。それも睡眠のためには必要なのでしょうが、当直中に熟睡はできないですね・・・
これまで自分のルールで決めてこれたが、就職後はルール外対応に
これまで医学生としては定期試験や国家試験をパスするために、図書館や自宅で勉強をしてきたり、部活動のために練習を重ねたり、ある程度の枠組みの中でも自分に選択がありました。寝る時間も起きる時間もご飯を食べる時間も自分で決めることができました。
これが初期研修医になると、まず仕事の時間の始まりはありますが、例えば17時定時で終了するとしても患者さんの容態がわるければ診察、診療、治療を行って、経過をみる必要があり、指導医や当直の先生に申し送りをして帰宅することもあります。
病院内で一番の下っ端のため、何かをお願いする医師は自分以上ですから半端な申し送りではよくないですし、自分から直接当直医の先生にお願いするよりも、先に指導医に相談をしてという報連相がルーチンに必要です。
自分が初期研修医だったときは病院のPHSが通じる範囲に住んでいるので、当直関係なく病棟から電話がくることもありました。今は働き方改革もあって、そのあたりの連絡はこないと思ってはいますが・・・
そんなこんなで睡眠時間が不足する、食事の時間が不規則になる、精神上も不安定になりやすいのです。ここまでくると初期研修医はストレスを抱え、適応障害になってしまってもおかしくはないでしょう。
こればっかりは対策として生活リズムを一定にする、食事はとる、楽しみを見つけて生活に張りをつけるなど。初期研修医を過ぎてからは、初期・後期研修を見守る側ではいました。
メンタル不調が続く場合は専門家受診を
5月病なんだろうね~で時間とともに怠さ、不調が改善してくればいいのですが、時間がたっても怠さ、不調が変わらず、仕事や生活に差しさわりがでるという場合には精神科、心療内科を受診しましょう。
順番としては上司に相談し、産業医がいれば産業医と面談し、専門家を受診するのがよいでしょう。ブラック企業ばりのブラック病院で上司も周囲も理解がない場合は職場を離れることも選択肢に入ります。
後期研修医でメンタル不調になるケースがあります
初期研修医の先生のメンタルの不調に直接対応したことがないため、後期研修医についての対応についての経験を少々お伝えします。話してきた5月病とは若干テイストが異なります。
後期研修医の先生では数名で適応障害やうつ病を発症した先生がいました。どの先生も性格は真面目で研修には熱心でした。5月ではないのですが、夏季休暇以降の夏~秋です。不眠症を患い、表情が乏しくなり、起きれなくなり・・・休息が必要な状態となりました。
きっかけの多くはパワハラ上司でした。他の研修医との比較をしてその医師を下げたり、強い言動であったり、言葉のいじめをしていました。これまた巧妙であまり表立った行動ではない、陰湿なものなので回りがあまり気づいていないことの方が多いです。みんなが心配するほどのパワハラが表面化することはないので、原因の上司側がすぐに移動するということは残念ながらありませんでした。
自分でSOSを発すること、周りが変化に気づいて「何か困っていない?」と聞くことが大事と思います。
この先生たちは産業医の先生やパワハラ医師とは別の一番上の上司の先生に相談しながら休養と薬物治療をはじめて、同じ職場には復帰できませんでしたが、別の病院で医師として勤務を再開でき、病気の再発はしていません。パワハラ側の医師も移動していきますが、部長クラスになるとそれは難しくてまだその場に居座っているというケースもあります。
大事なのはあなたの命であり、その場にとどまりやみくもに頑張る、踏ん張ることはではありません。これまで見てきたパワハラをする側は中高年の年齢になってくると根本からは本人、変わろうとしません。パワハラの認識がありません。
自分が離れるのが不本意でも、環境を変えて心機一転した方がエネルギーが少ないと思います。
ちょうどGW明けで5月病かも・・・という方が出てくるかもしれません。
一人で解決しようとするよりも周りはどうか?信頼のおける人に相談をしてみましょう!いなければ上級医やセンター長です。何らかの助けにはなるはず!
後半の話は5月病ではない話になりましたが、誰でも起きうることです。医師の職場環境は特殊だったりします。また職場はそこ1つだけではありません。場合によっては労働環境を変えることも必要かもしれませんが、人生の中ではほんの短い期間です。
無理は禁物ですよ。
[…] 初期研修医のメンタル→研修医は5月病になる?なりやすい環境ですよ! […]