青天の霹靂 帯状疱疹を発症しました
帯状疱疹と聞くと高齢者の病気と思っていませんか?
いえいえ、40代でも帯状疱疹になります!(私がかかりました)
同年代で帯状疱疹が心配な方、同年でなくても気になる方はどうぞご覧ください
さて、夏の某日の話です。子どもがよく膝や足の上で跳ねるので、あざができたり痛くなったりします。ある日、右の太ももが痛くなり、見ると少しあざがあったので、子どもがはねたせいだと思い込んでいました。その2-3日後の夜に右足の付け根に少し湿疹ができていました。アトピー性皮膚炎もあるのでひっかいたが下着のかぶれかな?くらいの感覚でした。
翌朝、右の太もも全体が痛くて、あざの痛みの局所とは違うな・・・と違和感がありました。そして右腰に湿疹がまとまってできており、痛くもかゆくもない、いやな予感がしました。皮疹は小さな水疱ではないのですが、帯状疱疹?教科書とは異なる水疱でした+ワクチンについても で以前、帯状疱疹の話題をさせてもらったときのように、水疱がなくても帯状疱疹がありえます。もしかして・・・と皮膚科に受診しました。
実は、昨日から太ももが痛くて、足の付け根と腰に湿疹ができて、帯状疱疹ではないかと不安で来ました。
どれどれ・・・これは帯状疱疹ですね。膀胱直腸障害がでてくると入院が必要です。なければ外来で。薬を出します。経過をみるので週明け受診してください。冷やすのはあまりよくないですよ。
ガーン💦嫌な予想的中でした。皮疹の部位からは腰の下の方の神経節の症状でよさそうで、尿がでない、便がでないという、膀胱や排便のダメージが伴うことがあります。これが伴わなくてよかった。入院となったら仕事は?こどもは?と色々心配です。尚、参考までに痛みはぶつけた痛みとはちがってピリピリとは言わないまでも皮膚表面が痛むなという具合でした。
帯状疱疹とは?
2023年5月の厚生労働省の帯状疱疹ワクチンについての資料から(https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001165467.pdf)引用します。表の年代は2016-2017年のため2024年現在と若干動向は異なると思います。
- 水痘帯状疱疹ウイルスに初感染(いわゆる『水ぼうそう』)後、生涯にわたって神経に潜伏感染しているウイルスが、加齢、疲労、免疫抑制状態などの宿主の免疫力低下によって再活性化※して起こる病態。
※再帰感染といい、一般に、初感染と比較して感染力が低いとされる。 - 加齢がリスクとされ、50歳代以降で罹患率が高くなる(ピークは70歳代。)。
- 主な症状は、ウイルスが感染した神経が支配する領域の皮膚の疼痛と皮膚病変(水疱形成)。
- 北海道での研究によると、60歳代以上の帯状疱疹患者のうち、3.4%で入院を要したとされる。
- 合併症として、皮膚病変が治癒した後に疼痛が残存し数ヶ月から数年持続する「帯状疱疹後神経痛」等がある。(帯状疱疹患者のうち20%程度が発症し、高齢になるほど罹患率が高いとされている)
- 治療法として、抗ウイルス薬が存在し、発症早期の治療によって合併症の予防効果も期待できる。
表のように若年での罹患は少ないですが、ないわけでもないのがわかります。40代は20-49歳とまとまっていますが、20-29歳と40-49歳でも罹患数は異なり、40代の方が多いのではと予想します。
20~40代の帯状疱疹発症が増えている!
国立感染症研究所HPより、帯状疱疹大規模疫学調査「宮崎スタディ(1997-2017)」アップデート(IASR Vol. 39 p139-141: 2018年8月号)(https://www.niid.go.jp/niid/ja/allarticles/surveillance/2433-iasr/related-articles/related-articles-462/8235-462r07.html)より図を引用します。オレンジの線が20-40歳の帯状疱疹の発症率の変化率です。
水痘ワクチンが子どもの定期接種導入になった2014年10月を境に、子どもでの水痘罹患率が下がった分、20-40代で子どもの感染からブースター効果で免疫を得た同年代が帯状疱疹を発症しやすくなり、2015年以降に帯状疱疹罹患が特に20-40代で上昇してきています。
帯状疱疹は水疱瘡になっていないと起きないはずで、加齢がリスクで、40代の自分はまず起きないと信じていたのですが・・水疱瘡は不顕性感染として症状がないままに感染していた、というのが少ないといわれています。ただ、母に聞いても水疱瘡になったことはないのです。要するに不顕性感染だったようです。
実体験をもって、水疱瘡にかかっていないと思ってもかかっている可能性があり、帯状疱疹になる可能性がある!ということです。
その後の病状経過
受診当日:診断を受けて薬局でアメナリーフ(*)という抗ウィルス薬を処方され、帰宅後すぐに内服しました。大き目の錠剤を1日2錠1回内服です。右足の痛みは続いています。鎮痛剤はアセトアミノフェン300mgで、痛いときは屯用という形での服用でした。
*ちなみに抗ウィルス薬のアメナリーフは比較的新しい薬剤で、以前主体だったのはアシクロビルという抗ウィルス薬です。アシクロビルは腎不全の患者さんで脳症を起こしたり、腎不全の患者さんには慎重に使用しないといけないという薬剤でしたが、アメナリーフは腎不全には関係なく使用ができます。アメナリーフは1錠1177.5円 ⁽200㎎1錠)と比較的高いです。アメナリーフの薬価は1錠1177.5円です。 7日間内服すると14錠(1日2錠を7日間) 16485円となります。 3割負担で約5000円の薬剤費となります。今回は受診が2回に分かれて、処方も2回で調剤費もあったためか、今回3割負担で窓口負担は6000円近くしました。
診断翌日:皮疹は腰のところがやや拡大、右のふとももの皮疹は上方と内側にあったのですが、中部、膝に近いところなど別の場所にもまとまってできました。同じく水疱ではない皮疹です。軽い頭痛を伴います。歩くのはゆっくりならば問題ないのですが走ると腰が痛い、階段は手すりを使って上がります。いつもより子どもとの関わりができなくなってきました。少し吐き気があり、朝食は少しにしました。また抗生剤の副作用か帯状疱疹の影響かわかりませんが便秘気味となり、普段飲む下剤量を増やしました。
診断3日目:皮疹の広がりは止まり、赤みがかっています。ふとももの表明の痛みはやや緩和されましたが、だるさ、頭痛、食欲低下が出てきました。軽い吐き気もあります。午前は外出したため、アセトアミノフェンを内服しました。夕方には頭痛や怠さで夕食は少しで、早々にあとは夫にお願いして、夜まで寝ていました。この体調だと仕事休みになるかもというほどでした。
*帯状疱疹の頭痛には髄膜炎を伴う場合があり注意が必要です。
2023年野口洋ら「帯状疱疹に続発した水痘・帯状疱疹ウイルス髄膜炎の2例」(https://doi.org/10.11321/jjspc.22-0001)を一部引用させていただきます。
帯状疱疹に続発する髄膜炎・脳炎の発生頻度は,帯状疱疹患者の0.2~0.5%と非常にまれである1–3).
特に免疫不全患者では帯状疱疹にとどまらず,脳血管炎 や髄膜炎などの中枢神経合併症をきたすことがあるとさ れ5) ,VZV 髄膜炎の可能性を念頭に置く必要がある.し かしながら通常の髄膜炎と異なり,髄膜炎の 3 徴候であ る発熱・頭痛・嘔気嘔吐などの身体症状や項部硬直・ jolt accentuation などの髄膜刺激症状を呈すことは少な いとされる6) .本症例 1,2 でも明らかな髄膜刺激症状 を認めなかった.
引用元: https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspc/30/2/30_22-0001/_pdf/-char/ja
自分の頭痛は立ち上がる時に特にひどくなり、安静にしていると軽快しました。発熱はなく頭痛と嘔気と倦怠感で髄膜炎までは至っていないだろうという意識でいました。
診断4日目:皮疹の拡がりは止まっており、皮疹部がひりひりとします。吐き気がおようさまり、朝食は前日よりは摂取できました。これならば仕事へ出勤できると思い出かけました。ただ自転車通勤で、自転車の段差でガタンとすると腰部に何とも言えない痛みが走るので段差のない道を選んで走りました。勤務中は階段は使いにくいので、上りはエレベーター、下りは手すりをつかってゆっくり、廊下もゆっくり、周りからみると病人が歩いているように思えるかもしれません。皮膚科から再診の指示を受けていたので、受診しました。
排尿障害はありますか?他にはなにかありましたか?
特にないです。皮疹はとまったようです。ただ頭痛や吐き気があります。
ウィルスが髄液に影響することもありますが直によくなりますよ。皮疹の中心の色が褪せてきているので、ピークは過ぎましたね。経過はいいですよ。痛みは寝れないほどないですか?痛み止めは使い切りました?
皮疹での痛みは飲むほど出なかったので、頭痛で痛み止めは1回だけ飲みました。まだ余っています。
再度アメナリーフ3日分の処方をいただいて(合計7日間内服)帰宅となりました。再診は飲み切った7日目です。
診断5日目:朝起きると皮疹の痛みはジクジクとあるものの、体全体は割と楽でした。まだ振動での体幹内の痛み、反動をつけると腰痛がありますが皮疹は広がりはなく、赤みがぼんやりとしてきました。食事はいつもより2-3割少ないが食べられる状態です。病状としてもピークを過ぎたということを実感します。まだ自転車の振動はつらく、歩行もゆっくりですが休み休みの勤務はできます。
診断6日目:皮疹の表面の痛みがピリピリした具合になってきました。体全体は楽、少し頭痛は出ますが持続はありません。起床時にすぐに内服していたアメナリーフを時間をおいて内服したことからも当初の焦燥感がなくなったことがわかります。自転車通勤中の振動での腰背部のなんともいえない痛みは、立ちこぎの要領でいると大丈夫とわかって、段差は腰を浮かすようにして何とか通勤もでしました。病棟ではよろよろ、ゆっくり歩くので・・・
歩くのゆっくりですが、お疲れですか?
帯状疱疹になってしまって右足が痛くで歩くのがゆっくりになってるの~
という会話になりますね。仕事は病棟・透析回診は歩きますが、カルテ入力は座ってで休み休みできるので、欠勤せずに業務はできています。
診断7日目:朝アメナリーフを飲めば内服完了と思って薬袋を見ると、まだ1日分残っています。振り返ると昨日は朝、飲み忘れてしまっていました!なんということ。皮疹がピリピリが増した気がするのはそのせいか?ということで急いで本日分を内服し、残念ながら明日までの内服期間となりました。ただ内服を忘れるというのはそれだけ改善しているということでもあります。皮疹の痛みは昨日より改善し、皮疹の色合いも落ち着いて退色してきた印象です。右腰から足にかけて、軽い神経痛があります。自転車通院では前日よりも振動による痛みが薄れてきました。ただ歩行はゆっくりでちょっとよろよろ、階段はエコでありませんが、上りはエレベーター、1階分の下りは手すりをつかってえっちらおっちらと階段を下ります。頭痛や吐き気はほぼゼロ、食欲は1割は減っていますがほぼ元通りです。
2回目の再診へ皮膚科受診します。
その後、尿は出ていますか?他どうですか?
尿も便も出ています。皮疹は落ち着いて、痛みは表面あります。あとは振動で体の中、神経痛のような痛みがあります。
経過とてもいいですね。神経痛については一番軽い薬(メチコバール)を14日飲んでみて、まだ痛みが続く場合は次の薬を考えるので来てください。
わかりました。帯状疱疹のワクチンはどうでしょうか?50歳で補助が出るとも聞きました。
一度かかると10年はかからないともいいますが、断言できません。ワクチンはいいと思ったときに打っていいです。50歳の誕生日あたりに打つのはどうかな?
このようなやりとりで診察終了。もらったのは自分でも末梢神経障害を疑う時に即効性はないなと思い処方するメチコバールというビタミンB12の処方でした。これがでると痛みは大したものではないとみなされているなと感じました。おそらくひどい痛みだと日常生活も支障が出るくらい、歩くのも大変、痛みで寝れないという状況でしょうが、自分はそれぞれそこまでひどくはなかったです。
診断8日目:起床時だいぶ楽で、皮疹はかなり消退してきました。表面の痛みはまあまあ、腰の神経痛もありますが、自転車の振動は耐えられないほどではなくなりました。また本来は抗ウィルス薬は終了しているはずが1日飲み忘れたため、残りを飲み、メチコバールも内服しました。
診断9日目:皮疹は目立たなくなりました。右腰と足の神経痛が残存し、歩くのがゆっくり目でいます。メチコバール効くのでしょうか?また報告します。
診断13日目:皮疹は目立たず、右足付け根の、右足大腿前面の皮膚の痛みとかゆみは変動がありますが感じます。また右腰、右足の痛みがありますが普通の速さで歩くことができるようになりました。
診断15日目:足の皮膚の痛みは若干あるのですが、ほぼ走ったりもできて、日常生活は元通りになってきました。
そして・・・メチコバールの2週間の内服が終わった3週間目は、ほぼいつも通り!帯状疱疹の皮膚の少しの違和感程度です。個人差があるでしょうが、発症1週間は休んでもいいくらい、とにかく無理をしないこと、2週間目も無理をしない、3週間目から通常通りという経過でした。
薬の飲み忘れ対策について(1日分飲み忘れていた・・・)
薬の飲み忘れを防ぐには高齢の患者さんには薬カレンダーの袋など医師としてはお勧めしていましたが、まさか自分が・・・
自分の経験から、臨時での1回内服などでしたら日ごろ持ち歩く財布にいれておく、スマホのカレンダーに内服と入れておくなどが工夫かと思います。
また薬カレンダーについて補足です。「薬 カレンダー」で検索するといろいろと出てきますよ。通常のシート処方では管理が難しいという場合に処方箋発行の際に主治医に一包化で処方をお願いすると、袋に印字されて「〇月〇日朝食後」で内服する薬1回分が一包化されてシート状に出てくるので日付通りにカレンダーのポケットにセットすると忘れにくいとなります。
ただ一包化処方にすると薬局での薬の時間がシート別より時間がかかるのと、血圧次第ではスキップする場合には一包化では飲んでしまうため別包にするなど(主治医から別包指示が必要かも)対応が必要です。
認知症の方は自分では難しいので、家族や訪問看護師さん(入っていればの話ですが)がセッティングして直接本人にその日の薬を渡して飲むのを確認するのが安全ですね。
なるべく1日3-4回の内服よりも、まとめられるのでれば1日1回内服だと飲み忘れもより防げるといいので主治医と相談してみてください。自分の経験上も薬持参忘れたり、持参していても勤務日の昼の内服は忘れがちになり、できるだけ昼食前後の内服は自分にも患者さんにも避けたいと思っています。
帯状疱疹ワクチンは救世主となるか?
姉に自分が帯状疱疹になったと報告すると、
大変そうだな
50歳から補助があるから今度打とうと思っていたよ~
との返答でした。50歳から補助があって打つのは罹患しやすい年齢から予防をというのにはよいと思います。母は数年前に70代でワクチン接種をしていました。
発症予防効果、持続年数をみるとシングリックスがよさそうですが、以前患者さんでシングリックスの副反応がひどくて2回接種しなかった方もいるので考えて決めた方がよいですね。
侮るな帯状疱疹!
このように過去に水疱瘡になっていないと思っていても、帯状疱疹になります。
そして、帯状疱疹のはじまりは小さい水疱の集簇だと思っていると、前回の患者さんのケース、今回の自分の症状からすると帯状疱疹と思わず診断が遅れる可能性があります。痛みやかゆみのない赤い発疹が集まって、腰(あるいは胸、あるいは足、あるいは顔)に出てきた場合には念のため皮膚科受診しましょう。
診断、治療の遅れはのちに耐えがたい帯状疱疹後神経痛を起こす可能性があります。以前担当した患者さんは帯状疱疹後神経痛でペインクリニックに通院、ブロック注射などなど受けていましたが、それでも発症から1年以上たっても痛い痛いといってらっしゃいました。
罹患中は休養がいいのか?正直、頭痛と吐き気がでた診断3日目はお休みをもらいたかった状態でした。その後はたち仕事やハードワークでなければ体と相談して勤務はできると思います。いろいろ大変でしたが、自分にとっては普段感じない頭痛が一番つらかったです。
デスクワークはできるでしょうが、肉体労働的は休んだり、患者さんと接して介助する場合は感染性もあるので休養された方がいいと思いますが主治医に相談してください。希望すれば勤務先に提出する診断書も出してもらえるのではと思います。
今回のことを報告すると同年代や若い世代で罹患した!という声があり、帯状疱疹が高齢者の病気と思っていたことを恥じました。
そして帯状疱疹はぶつぶつででていたいだけではなく、頭痛や吐き気を伴うこともあり、予想より大変でした。
できれば罹患してから1週間ほどは無理はしないで仕事を休んだり、休息をよくとるようにして、とにかく自分をいたわるように過ごしましょう!
[…] 追記:さて同年夏に40代で自分が帯状疱疹に罹患しました。このときの体験談を報告しますが、この当時は全く自分がなるとは思わなかったのです・・・→40代で帯状疱疹になりました~水疱瘡にかかっていなったはず・・・ […]
[…] 自分が罹患した病気について→40代はじめての大腸検査 診断名は非特異的腸炎!?整腸剤の知識をもとう!、咳がとまらない:産後の長引く咳(=慢性咳嗽)の原因とは?添い寝は気をつけるべし!、幼少期よりアトピー性皮膚炎とのお付き合い①、アトピー性皮膚炎とのお付き合い② 乾燥対策?入浴剤使っていますか?衣類への注意、便秘で困っていない?!便秘はQOLを低下させる!コロコロ便をバナナ便へ、40代で帯状疱疹になりました~水疱瘡にかかっていなったはず・・・ […]