おくりびと(死後)~エンゼルメイク、湯灌について

女医ママ
くまさん
女医ママ くまさん

おくりびとというと最近は「億り人」の文字で投資家で稼いだ人を指すようですね。

今回は「おくりびと」映画の題名になった方の納棺師や死後ケアをテーマにしました。

医療に関連がある方、亡くなったときのケアに興味がある方向けの話をします。

だいぶ前の話です。納棺師のことが気になり、映画「おくりびと」を当時はTSUTAYAで借りてみました。

映画で主演された本木雅弘さんが読んで感動し、この映画を作ろうと決心させた本「納棺夫日記」です。これも読みました。

「おくりびと」に会ったことはありますか?

映画のような納棺師さんではありませんが、ご遺体にエンゼルメイクを行ったり、湯灌を行ったりということについては、私は大きく分けて仕事上で専門の方に会ったことがあるのと、自分の家族でお願いした側としてあります。

エンゼルメイクとは?

ある勤務した病院では「エンゼルメイク」を専門に行う方がいました。亡くなられた患者さんは「おくりびと」の映画を見た方はご存じと思いますが、女性の方でしたらお化粧をしてもらったりして闘病生活の疲れた様子ではなく、生前を彷彿とさせる様子になるのです。

はじめて「エンゼルメイク」の方の仕事、亡くなられた患者さんの顔貌からよい表情の顔貌になった様子をみて、自分の家族のときもお願いしたいものだと思いました。

希望があれば患者さんが生前使用していた化粧品でお化粧もお願いでき、ある女性の患者さんが亡くなれた時は娘さんの希望で患者さんが使用していた口紅を使ってメイクをしてもらっていました。

亡くなられた方の様子をみるのは親族や葬儀で呼ばれた際になると思いますが、たいていは白くて遠い存在になっておられます。納棺師さんの仕事の結果、生前のような様子で少し近い存在に思うことができるのではないかと思います。

エンゼルケア=エンゼルメイクではない

もともとエンゼルケアは亡くなった方へ行う死後の処置で、身体をきれいにしたり、化粧をしたり、着替えをしたりということを指します。

病院で看護師さんが「エンゼルケアをします」という場合は、点滴などの体に入っている医療物を取り除いたり、身体をきれいにして着替えをすることを指すことが大半でしょう。病院のエンゼルケアでエンゼルメイクまでしてもらうことは病院の忙しさからするとあまり一般的ではないと思われます。

身近な家族で「湯灌」を経験した

エンゼルケア・エンゼルメイクのことを仕事上知っていたため、身近な家族が在宅介護の末、自宅で亡くなったときに、葬儀会社さんに連絡をして、対応できないかを聞いてみました。すると「湯灌」ができるというのでお願いしました。

葬儀社の関係者が自宅にきて、「一緒に洗髪をしますか?」と聞かれたので家族で洗髪を一緒にしました。闘病で洗髪もままならなかったので温かいお湯で洗髪や体を清めるとことができて、本人も嬉しいと思いました。これは「湯灌」といいます。家族としても、本人が最期まで尊厳を保って旅立てると納得ができました。

詳細は記憶していませんが、お化粧などや口に綿を入れたりして、げっそりした顔貌からいい顔貌へ変身をした故人を送ることができました。

コロナ後はどうかわったのか?

新型コロナウィルスに罹患した患者さんは亡くなられると、葬儀会社さんが専用のシートに覆う形でご遺体を搬送します。ご家族は場合によってはお顔を見れないまま火葬されるのだと思われます。

病院側としては最期に病院に来られたご家族さまが希望される場合は、ご家族に完全防護服を着てもらって、本人さんに会っていただくことはできます。

コロナ罹患や疑いがあるとおくりびとどころではなく、死に際に直接触れることもできない状況となってしまうのです。

エンバーマーによるエンバーミングという仕事

ここまでは亡くなられた状態、姿に対して行われたものでしたが、闘病や事故の影響をなくして薬剤の使用もしたうえでご遺体を修復するというエンバーミングという仕事があります。また感染症で亡くなられた場合にはその処置によって安全に対面することができるそうです。

結核などの感染症にかかったご遺体であっても、エンバーミングによる消毒・殺菌処置後は公衆衛生上安全になります。
その結果、免疫力の弱いお子さまやご年配の方も安心してご遺体に触れることができ、十分なお別れの時間を持てるようになるのです。
通常のご葬儀に近い形でのお別れが可能となるため、感染症で亡くなった故人と対面してお別れを希望する場合エンバーミングをおすすめします。

https://embalming-sec.com/column/221201/

そしてエンバーマーは資格を得る職業です。タレントの壇蜜さんが葬儀屋さんに勤務していた経歴があると聞いたことがありますがエンバーマーの資格を有しているそうです。

日本でエンバーマーとして仕事をするには、一般社団法人日本遺体衛生保全協会(以下IFSA)認定の資格を取得する必要があります。
これは国家資格ではありませんが、エンバーマーに求められる知識や技術を持っていることの証となります。

https://embalming-sec.com/column/221201/

家族が亡くなる前からできること

家族が亡くなってから急に葬儀会社を探したり、というのは時間もない場合は難しいです。その場合は病院が通常お願いしている葬儀会社さんに連絡が入って、対応をしてもらえます。

ただ末期がんなど余命がわかっている方のご家族さまで、エンゼルケア・メイクや湯灌などあらかじめ希望したい場合は生前から葬儀社さんを探して、相談しておくことをお勧めします。

今回この文章を書きながら、先日医学生で解剖学実習の話につながりますが( 正常解剖と病理解剖について(医学生・研修医時代)~ドクターエッグスを読んで振り返る~)、献体をしていただいた場合はこのようなケアからは程遠くなるなと思いました。献体には医療に貢献したいという強い意志がある立派なものです。自分自身として献体を希望はしていないのですが、家族で強い希望があった場合は意志を尊重したいと葛藤しつつも思います。そのためにも生前に本人とじっくり話すことが大事と思います。

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