2024年被団協のノーベル平和賞受賞と医療系の被爆について考える

女医ママ
くまさん
女医ママ くまさん

ノーベル平和賞を被団協が受賞されたことが10月に話題になりましたね。

個人的に被爆者の方と知り合いということがないのですが、唯一の被爆国として知らなければならないこと、日本人として発信しないといけないと思うようにはなりました。

また医療者としては放射線検査、治療で放射線が身近な存在でもあり、無知の知であってはいけないとも思います。

今回は放射線について特に医療系の被爆について気になっている方向けの話です。

被団協がノーベル平和賞受賞

世界で核兵器保有国は戦争や内紛のロシア、イスラエルをはじめ、日本の近くの北朝鮮、そして日本はアメリカの核の傘下にいるために、唯一の被爆国でありながらも、核禁止条約への参加をしていない。平和賞を受賞しながら、唯一の被爆国でありながら、国としての行動には矛盾は感じます。

10月にアトムズプリント(親としての学び中①~オンライン留学 アトムズアカデミー入会~)でノーベル平和賞がとりあげられたため、ノーベル平和賞について、被爆について、戦争について絵本の読み聞かせを子どもにもしました。

ビキニ環礁での第五福竜丸の水爆の被爆については詳細を知らなかったので、知ることができましたし、東京新聞に記載があり、都内に第五福竜丸が展示されていることを知りました。→http://d5f.org/

特に8月6日の新聞では「79年前の今日、広島県に原爆が落とされたんだよ」と子どもたちに伝えました。戦争を正しく怖がって、反戦、NO MORE 広島!の精神を持つためには、約80年前の日本がどうだったのか、同じ年齢の子供がどうだったか?について伝えていかなくてはと思います。

自分が小学校の頃に沖縄戦の本を読んだり、はだしのゲンの漫画を読んだりと学校内での戦争について学ぶ機会はありましたが、広島県のように8月6日を「広島平和記念日」と制定して登校日としている学校もあるそうです。全国でも同様な取り組みをしたり、終戦日を日本全体で平和を考える日としてもよいのでは?

家庭内でも戦争に関する本を読んだり、近くの平和館を訪ねたり、日常でも子どもたちと話していくことが戦争が遠くないことを知る機会になると思っています。

平和館に行ってみて、防空壕体験をしたり、世界の核兵器の数やその核兵器で世界が消滅する体験などもあり、大変興味深かったです。

医師たちの医療系の被爆とは?

さて医療従事者は職業上の被爆と隣り合わせで、診療行為によって受ける被爆のことを「職業被ばく」といいます。

放射線を受けると細胞の中のDNAに障害を受けます。その線量が低ければ害は少ないとはいえ、被ばく量はできるだけ少ないに越したことはありません。

特に検査で放射線を利用する透視に関わる循環器内科、消化器内科外科、脳外科では検査や治療で医療被曝を受けます。最近の検査を見ていないのでその防護服がどの程度かわからないのですが、以前の勤務先では首(甲状腺)を覆うタイプ+体幹から膝上まで覆うタイプを防護服として着用していました。首を覆うタイプはしていない方も多かったですし、病院によりけりとも思います。

日本医学物理学会 放射線防護委員会HP 「医療従事者の被ばく線量」(https://www.jsmp.org/doc/bougo/occupationalexposure/situation.html#:~:text=%E3%82%AC%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%83%90%E3%83%83%E3%82%B8%E3%81%AB%E3%82%88%E3%82%8B%E5%80%8B%E4%BA%BA%E3%83%A2%E3%83%8B%E3%82%BF%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%82%B0,%E3%82%92%E8%B6%85%E3%81%88%E3%82%8B%E5%A0%B1%E5%91%8A%E3%82%82%E3%81%82%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82)より引用します。詳細はこちらのHPを参照ください。

ガラスバッジによる個人モニタリングサービスの報告書によると、医療従事者の職種別の年平均実効線量は0.77 mSvで診療放射線技師が最も高い値であることがわかります。一方、実効線量が20mSv以上となる割合は医師で高く、50 mSvを超える報告もあります。IVRなどにおいて、医師は放射線の発生源に最も近い位置で手技を行うため、線量の最大値は増える傾向にあると考えられ、職業被ばくを最小化するためにも防護措置を適切に講ずる必要があります。  

職種別の実効線量の推移をみると、2014年度に最も高い値となっているものの概ね横ばい状態です。業態種別の実効線量は、2017年度においては一般病院で最も高く、続いて診療所・その他、大学病院、保健所、歯科医院の順で高くなっています。近年では一般病院の実効線量は減少傾向ですが、診療所・その他、保健所で増加傾向となっています 

作業内容・環境の適切な管理、防護に関する知識の共有、最新の医療機器の導入などにより、職業被ばくを低減することが望まれます。

研修医時代に受けた被爆、無知の時代

さて、自分が初期研修医の頃、救急センターでは救急搬送後に処置室で一次対応してから、画像CT検査をほぼルーティンを行い、頭から足までCT画像撮影をしていました。

患者さんは不穏、意識障害の場合、CTの機械からの「息を吸ってそのまま止めてください」という指示が入るわけはなく、時に状態不安定のためモニターをチェックしたりしながら、そのモニターのコードや状態が逐一わかるように、ほぼ毎回研修医はCT検査室に患者さんと一緒に入っていました。

放射線技師が着用する体幹を覆う鉛の防護具は着るのですが、全身すっぽり覆われるものは皆無であり、首以上と両腕、ひざ下は防護されていませんでした。

1日数件の救急車で付き添って検査室に入りますので、あの時代の救命センター研修の2か月の間、自分はどれくらい放射線を浴びたのだろうか?とたまに思うことがありますし、2カ月の限定でまだよかったのです。おそらく今は医師に線量を測定するバッチを付けさせ、1月の被ばく量を確認できる体制はとられているのでしょうが、20年前の研修医には配慮は全くなかったのでした。

このように研修期間はどうしようもないと半ばあきらめ、拒否することもなく、ひたすら画像検査の際には患者さんに付き添っていました。いまから約20年前の話ですので、今は違うといいと思いました。ただ医師は勤務時間も含めて、自己犠牲的な部分が多分にあり、多少の被ばくを患者さんのためにと頑張っている先生もいるのではないかという懸念は常に持っています。

そして将来は放射線とは関係がない科にしたいという気持ちがありました。当時は下っ端に拒否する権限もないばかりか、かといって人員的余裕もないです。3年目以降の専攻で何科を決めるかのときに(医師は自分の専門をどう決めたのか? 腎臓内科編)では被爆のリスクを減らしたいという記載にしていましたが、検査・治療で放射線で透視を使う循環器、消化器科、放射線科の選択もないと思っていました。今現在該当科を専攻されている先生方や関係者には不快な表現と思いますが、20年前の自分はそう考えていました。

患者さんにとっての医療被曝とは?

医療被爆は検査や治療で受けますが、内訳としてはX線CT検査で受けるものが多く、次が一般X線診断です。

10年ほど前には患者さんにCT撮影、核医学検査をする際に被爆についても説明が院内で義務付けられました。患者さんへの検査説明には結局被爆のデメリットがあるものの、病気を見るため、見つけるために必要なので撮影をさせてもらえないか?という説明内容となり、検査ありきでの説明になっていました。医療者としては患者さんにとって不必要な放射線の画像検査は控えるべきとは思います。

日本放射線医学学会HPよりCT検査(https://www.jsrt.or.jp/data/citizen/housya/ct-01/#05)について引用します。

CT検査に限らず、医療行為には必ずメリット・デメリットが生じます。CT検査では上記のように、他の放射線検査では得られない詳細な形態画像を得ることが可能で、現在の画像診断の根幹を成す検査と言えます。一方で他の放射線検査に比べると被ばく線量は高い部類に入ります。
放射線の影響は確定的影響と確率的影響に分類されます。確定的影響はしきい値を超えると統計的に急激に組織・臓器に障害が現れます。しかし、通常のCT検査の臓器線量は20~30mGy程度で、最も敏感な器官形成期の胎児奇形線量の100mGyを超えることはありません。また確率的影響は全身に200mSv以上の被ばく(実効線量)を受けたとき発がん率が一定の割合で増加します。しかし200mSv以下の人体への影響の定説はなく、通常のCT検査の実効線量は10mSv程度であり発がんの確率はあっても低いものと考えられます。

またCT検査の検量については、ICRP CTにおける患者線量の管理より引用します。(https://www.icrp.org/docs/P87_Japanese.pdf)CT検査は全体に多い線量ですが、特に頭部CT撮影での線量が多く

尚、胸部レントゲンの線量は0.06mSvと線量がCTと比べて少ないので定期的なフォローでのレントゲン撮影は大きな問題にはならないと思います。

被ばく線量について

環境省HP(https://www.env.go.jp/chemi/rhm/h30kisoshiryo/h30kiso-04-01-02.html 、https://www.env.go.jp/chemi/rhm/h30kisoshiryo/h30kiso-04-02-04.html)より、線量限度、健康リスクについて図を転載します。職業上の線量限度も一般公衆の限度も以前より厳しく制限されています。

自然放射線とは?

医療系被爆は放射線を使用するときに受ける被爆になりますが、日常生活でも人間は自然放射線を受け、年間2.1ミリシーベルトの線量を受けています。

エネ百科より画像転載(https://www.ene100.jp/zumen/6-2-2 )

魚の摂取によるポロニウム210について、厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/iken/dl/171206-2_04.pdf)から資料転載します。

尚、たばこの葉ではポロニウムが濃縮され、喫煙者では摂取量が増えるそうです。

女医ママ
くまさん
女医ママ くまさん

最近ロシアが核使用の基準を引き下げるという恐ろしいことが・・・

医療系の放射線と核兵器とは違いますが被ばく量は少ないほど良い。

医療系には病気の診断治療に有用なため、放射線はメリットをデメリットを比較して、メリットが上回れば医学的な使用はよいと思います。

が、軍事的な意味ではデメリットしかありません。発見、発展させた科学者たちが泣いています。

ノーベル創設のノーベルもダイナマイトが建設の役に立つと開発したにも関わらず、軍事利用に矛盾を感じ、築いた富をノーベル賞へとした経緯があります。技術は利用により善悪どちらにもなりうる面があり、使う側のモラルが問われますね。

唯一の被爆国としての意義はこれからの軍事利用への警鐘になればいいのですが、子どもたちにも伝えてきたいと思います。

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